『アニマル・キングダム』の監督、デヴィッド・ミショッド

2010年の賞レースを賑わせたオーストラリア映画『アニマル・キングダム』が1月21日(土)より公開される。本作で高い評価を受け、世界にその名を広めた同国の監督デヴィッド・ミショッドのコメントが届いた。

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まるでディズニーのネイチャー・ドキュメンタリーのようなタイトルからは想像もできないハードなクライムドラマがこの『アニマル・キングダム』。監督ミショッドはそのタイトルの由来を「警察や犯罪者、彼らの周辺に暮らす人々、そういう人たちについての映画を作りたかった。タイトルは様々なキャラクターの生態系を反映させたものにすべく命名した」と語る。

タイトルも意表を突くが、それ以上に驚かされるのが先の見えない物語。クライム映画としての面白さに留まらず、“アニマル・キングダム”に放り込まれた無垢なティーンエイジャーの成長物語が思わぬ方向へとシフトしていくのだ。本作を、やはりクライムものや先の読めない展開を得意とするクエンティン・タランティーノが絶賛したというのも納得である。「タランティーノが褒めてくれたというのは、とても嬉しかった。多くの人から褒め言葉をもらったけれど、どれも社交辞令のような気がしていて(笑)。そんななか、クエンティンのような人物が公にそんな発言をしてくれると本心に違いないと思えるので、喜びもひとしおだった」

とはいえミショッドの目指したのは「タランティーノやガイ・リッチーのクライム映画とは違うもの。もっとシリアスにしたかったし、暗く不快であるにもかかわらず、詩的で美しい世界にしたかった」。つまり、模倣などではなく、自分の個性を押し出したオリジナルな作品にしたかったということだ。

そんな自信をのぞかせるだけあって、他の作品に対しても手厳しく「映画を観るとほとんどが失望させられるので、本を読んだり音楽を聴いている」のだとか。そして「『アニマル・キングダム』は美しい音楽のついた良質の小説のような作品を目指した」という。この個性と自信が嘘でないことは『アニマル・キングダム』を観ればわかるだろう。

文:渡辺麻紀

『アニマル・キングダム』
1月21日(土)よりTOHOシネマズ シャンテ、新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー