楳図かずお監督、片岡愛之助

77歳にして初めてメガホンを執った漫画家・楳図かずおが18日、東京・新宿ピカデリーで行われた初監督作『マザー』の完成披露上映会に、主演を務める歌舞伎役者の片岡愛之助とともに出席し「噛めば噛むほど、味が出る映画」と自伝的な本作をアピール。一方、劇中で楳図を演じた愛之助は「外見も似ていませんし、最初は即お断りしていた」と振り返った。

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映画は鬼才漫画家・楳図と、彼の自叙伝を担当する女性編集者が、死んだはずの楳図の母の怨念が引き起こす怪奇現象に襲われるというホラー。楳図自身が脚本も手掛け、独特な作風に強い影響を与えたとされる実母との思い出を掘り下げた。楳図“監督”は「漫画と映画ではまったく道筋が違うが、モノづくりとしては同じで、僕にとっては19年ぶりの新作。愛之助さんをはじめ、いろんな皆さんの力を借りて、感謝です」と映画の完成に喜びをかみしめた。

愛之助をキャスティングした経緯を「最初は誰でもいいかな、と思っていたけど(笑)、映画とも漫画ともまったく違う、歌舞伎界の人というのが面白いかなと」と説明。一方、愛之助は「初監督とは思えない堂々とした演出で、余裕を感じた。絵コンテで表情を説明してくださったり、あとは『台本読んで、思った通りに演じてください』って(笑)」と楳図監督の手腕をべた褒めした。

現場は「和気あいあいとした雰囲気だった」(愛之助)といい、「こんなに明るくて、ホラーとして成立するのか不安もあったが、ストーリー重視のきちんとしたホラーになった。楳図先生の独特な世界観」と太鼓判。楳図のトレードマークといえば、赤白ボーダーのシャツだが「キャラクターの気持ちの変化で、ボーダーの幅が広くなったり、狭くなったりするんです。漫画家さんらしい発想」(愛之助)、「ボーダーはエネルギーのかたまりですから」(楳図)とこだわりの演出を明かしていた。

『マザー』
9月27日(土)より新宿ピカデリーほか全国にて公開