斉藤由貴  撮影:源 賀津己 斉藤由貴  撮影:源 賀津己

三谷幸喜が書き下ろし、演出を手がける舞台『紫式部ダイアリー』が11月、PARCO劇場に登場する。「男が出てこない作品を書いたことがなかった」と語る三谷が初めて挑んだ女優ふたり芝居である。現代を生きる紫式部と清少納言、ふたりの女流作家による痛快バトルが描かれた物語で競演するのは、初顔合わせとなる長澤まさみと斉藤由貴。三谷作品は『君となら』(1995年初演、1997年再演)以来、およそ20年ぶりの再挑戦となる斉藤に、過去のエピソードや新作舞台にかける思いを聞いた。

舞台『紫式部ダイアリー』チケット情報

「『君となら』初演の時は、三谷さんは台本を書くことで精一杯で、いっぺんも稽古場に来なかったんですよ。私たち出演者は、毎日ファックスに少しずつ届く台本を待って、稽古をしていました。最終的に台本が全部あがったのは、幕が開く十日前くらいだったでしょうか。今回は、三谷さんご自身が演出されるので台本を遅らせるわけにはいかないでしょうね。でも逆に完成が遅ければ“台本の完成が遅かったからせりふを覚えられなかったんです!”という言い訳ができるかな~なんてズルいことを考えたりして(笑)」

つまり、三谷と実質的に力を合わせての舞台作りは今回が初体験。「楽しみだけれどドキドキする」とチャーミングに笑いながら、人間・三谷を信頼を込めて鋭く見つめている。「三谷さんってパッと見は、オドオドした低姿勢風なアプローチをしているじゃないですか。でも実はすごいファシストな面を持っているんじゃないかと(笑)。自信満々で、絶対にこう!と思ったことを曲げない強さがあるような気がする。自分の作品を打ち出す人には当然、そうであって欲しいと思うんです」

さらに、ふたり芝居という高き壁にともに向かう事務所の後輩、長澤に対しても「先輩、後輩というのはまったく関係なし」と同志の瞳を向けた。「まさみちゃんは感受性が豊かで、ピーンと張った琴線のようなものを持っているイメージがあります。おそらく尖った部分も持ち合わせているはず。でもそれは女優の種として必要不可欠。それがあるから素敵だし、この人好きだなと思えるんですよね」

目下の最大の不安は「せりふが覚えられるかどうか。とにかくせりふ覚えが悪いんです。三谷さんに“せりふは三行以内で”とお願いしたい(笑)」。だが、刺激的なオンナふたり芝居への好奇心は高まるばかり。三谷ワールドに飛び込む態勢は万全だ。「若く美しくて飛ぶ鳥を落とす勢いの紫式部(長澤)と、年齢を重ねるほどに先行きに不安を感じる清少納言(斉藤)の構図は、きっと多くの皆さんがイメージされるんじゃないかと。ま、私自身はそれほど不安を抱えちゃあいませんが(笑)。でもやっぱり女性として、年々お肌の悩みなどは出てきます。マゾじゃないけど、そうした等身大の不安を舞台上で表現するのは面白い経験になるだろうなと。楽しんで取り組みたいと思います」

公演は11月1日(土)から30日(日)まで東京・PARCO劇場にて。チケットの一般発売は9月20日(土)午前10時より。

取材・文 上野紀子