土持政照役の斎藤嘉樹

 国父・島津久光(青木崇高)の命に背いた罪で沖永良部島へ送られた西郷吉之助(鈴木亮平)。そこで出会ったのが、薩摩藩の役人として吉之助の世話をする土持政照だ。島出身ながら薩摩で学問を身に付けた土持は、献身的に吉之助を支え、やがて義兄弟の契りを交わすこととなる。土持役でフレッシュな演技を披露しているのは、期待の若手俳優・斎藤嘉樹。初めての大河ドラマ、初めての時代劇となった本作の現場で感じたことや、鈴木亮平との共演について語ってくれた。

-第24回、嵐の中で牢に入れられたまま衰弱している西郷を、土持が助けようとするシーンはすごい迫力でした。どんなことを考えて演じましたか。

 実はあまり覚えていないんです。美術が非常にリアルで、スタッフさんたちも緊張感のある空気を作ってくれた上に、本物の嵐が来て、雨もものすごくて…。完全に役に入り込むような状況だったので、始まるまでは「助ける!」という気持ちで集中していたのですが、始まった後は何も覚えていません。多分、せりふにないことも言っていたんじゃないかと…。僕も、どんな気持ちだったか知りたいぐらいです(笑)。

-初の時代劇、初の大河ドラマということですが、出演が決まったときのお気持ちは?

 とにかくびっくりしました。今までの経験上、僕には時代劇の演技論というものが全くない状態だったので。もちろんテレビでは見ていましたが、それを自分で表現できるのかな…?など、不安が大きかったです。所作も現代とは違うので、ものすごく勉強しました。

-土持政照は実在の人物ですが、演じる難しさはありましたか。

 いろいろ調べてみたのですが、西郷さんのことは詳しく書いてあっても、土持さんのことは、“こういうことがありました”という出来事ぐらい。人柄や性格までは分からず、「きついな…」と思ったまま沖永良部島に行くことになりました。ところが、ちょうど撮影初日が強風で休みになったんです。そこで、西郷記念館など、ゆかりの場所を回らせてもらいました。そうしたら、僕が土持役だと知った地元の方々が、いろいろなことを教えてくれて…。おかげで、僕の中でどんどん土持という人が確立されていきました。役作りの面では、島の皆さんにすごく助けられました。

-実際に演じてみた感想は?

 亮平さんがいろいろなアドバイスをくれたので、2人で「ここはこうでは?」、「このせりふ、俺はこう思う」などと話し合いながら、芝居を作っていきました。その結果、台本で「西郷先生」と呼んでいた部分を、義兄弟の契りを交わした後は「西郷さぁ」に変更させてもらったりもしています。

-鈴木亮平さんの印象は?

 初めて会ったとき、「よろしくお願いします」と笑顔で丁寧にあいさつをしていただいて、とても温かい人だなという印象を受けました。撮影に入ると、最初のうちは距離があって何を話していいのか分からない感じでしたが、今ではもう、お互いに目を見てうなずくだけで会話ができるくらいになりました。セッションなんかもできたので、まるで兄弟のような気分です(笑)。

-鈴木さんが演じる西郷はいかがでしょうか。

 すごいです。まず、押さえている情報量が半端ではありません。何を聞いても必ず答えが返ってきますから。西郷隆盛以上に西郷さんのことを知っているのではないかと。たたずまいも、まさに“西郷さん”といった雰囲気で、手を広げて待っていてくれるような懐の広さを感じるので、「西郷さぁ」と呼びかけるときも、遠慮なく向かっていくことができます。そういうところから役作りしているんだなと、改めてすごさを感じました。

-土持は沖永良部ことばと薩摩ことばの二つを使いますが、ご苦労も多かったのでは?

 切り替えは大変でした。沖永良部ことばでしゃべっていたと思ったら、次は薩摩弁で、その後また沖永良部弁…。その上、子どもたちとのやり取りでは、アドリブが求められます。だから、子どもたちが来た瞬間、沖永良部ことばでアドリブを言って、横を見たら西郷さんがいるので、「ああ、どうしよう…!」みたいな(笑)。

-二つの方言をどのように習得しましたか。

 方言指導の方が録音してくれたものを、毎日、外出するときもずっと聞いていました。家にいるときは、紙に書いてアクセントに印をつけて、何度もしゃべって練習して…。それを二つやらなければならなかったので、とりあえず必死でした。外国語を覚える方が楽だと思ったぐらいです。

-沖永良部ことばで言わなければならないところで、薩摩ことばが出てしまうようなことも?

 たくさんありました。その度に、「違うよ」と注意されて(笑)。役者同士の話し合いでせりふが変わり、一から方言をやり直したこともあります。しかも、翌日の朝10時からの撮影に間に合わせなければいけない。だから、夜中に撮影が終わった後、寝る暇を惜しんで、朝まで1人でカラオケボックスにこもって必死に練習しました。

-この作品を経験したことで、ご自身の成長はどんなふうに感じていますか。

 より深く、役について考えるようになりました。僕にとっては、やっぱり亮平さんの存在が大きかったです。ストイックな役作り、芝居に対する姿勢…。現場での姿を見て、いろいろな話もさせていただきましたが、全てが勉強になることばかりでした。

-鈴木さんも渡辺謙さん(島津斉彬役)からいろいろなことを学んだそうですね。

 亮平さんも大河が初めてだったので、渡辺謙さんからいろいろなアドバイスをもらったという話は聞きました。それを受けてのアドバイスなので、僕は渡辺謙さんから教わったようなものです(笑)。でも、先輩・後輩というのは、そういうものだと思うんです。亮平さんが学んだことを僕につなげてくれた。だから、僕もそれをこれからつないでいかなければいけない。芝居というのは、そうやってみんながつないでいくものではないかなと。

-“謙さんイズム”を受け継いでいる部分もありそうですね。

 そうですね(笑)。渡辺謙さんにはまだお会いしたことはありませんが、機会があれば「“謙さんイズム”を受け継いでいます!」と伝えたいです。怒られそうですけど(笑)。

(取材・文/井上健一)

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