関西で人気の劇団「壱劇屋」のWordless×殺陣芝居シリーズ「独鬼-hitorioni-」が7月12日(木)から東京・愛知にて上演される。高校演劇から始まった人気劇団の10周年に届ける公演。劇団の代表で役者の大熊隆太郎、殺陣と本作の演出・脚本を手掛ける竹村晋太朗、女優の西分綾香に話を聞いた。

劇団壱劇屋「独鬼-hitorioni-」チケット情報

死なない鬼と人間の女の物語を描いた本作は、2016年の初演で関西にて1100名の観客を動員した作品の待望の再演。台詞を使わずに身体表現で物語を展開していく“Wordless×殺陣芝居”シリーズの作品。これは殺陣を見せるエンタテインメントショーではなく「言葉がないぶん、物語性は通常の芝居以上に重視しています」(竹村)という作品だ。

作・演出の竹村は「僕は必要最低限で伝わることが世の中にたくさんあると思うんです。悲しいときに『悲しい』と言わなくても伝わるように、台詞がなくても(感情は)伝わる。“Wordless”にすることで感情を解放できる、そしてお客様が感情移入できる作品になれば」と語る。その感情表現に殺陣を選んだのは「殺陣は感情が高ぶらないと発生しない行動だから」で、殺陣そのものに感情そしてストーリーを感じる壱劇屋ならではの表現だ。演じる大熊は「お互い空気でやりとりしているぶん、そのときそのときを感じながらできる。演劇の“底のほう”の楽しさがあります」。

「死なない鬼が、人間の子供が成長して死ぬまでを見る話です。自分の人生観をかなりさらしています」(竹村)という作品。物語について西分は「普遍的な物語だと思いました。“生きていく”ということをありのままに描いている話なので、そのとき自分が置かれている状況によって感情移入する部分も変わるんだろうなと思います」。“1100人が涙した”という謳い文句もあるが「本当にみんな泣いてるんですよ。中には5分で泣いたという方もいて。そんなの普通ありえないと思うのですが、台詞がないぶん、例えば感動する写真を観たときのように、その人の中にあるものとリンクして、感情が刺激されるのではないかと思います」(大熊)。

「関西にも観に来てほしいという思いでツアーをしています」(大熊)と、ツアーを行うのは年に一度だけ。昨年、大阪で上演された5か月連続の殺陣芝居企画は5800名の動員を記録し、その1割は関西圏以外からの観客だったという。東京で“Wordless×殺陣芝居”シリーズを上演するのは今回が初。壱劇屋ファンはもちろん未体験の人もぜひ一度劇場に足を運んで!

東京公演は7月12日(木)から17日(火)までシアターグリーン BOX in BOX THEATER、愛知公演は7月28日(土)・29日(日)に名古屋市東文化小劇場にて上演。チケットは発売中。

取材・文:中川實穗