ゲーム障害の症状や予防策、治療法の確立が誤解を避ける手段になりうる

世界保健機関(WHO)は6月18日、コンピュータゲームのやり過ぎで睡眠や学業、仕事などの日常生活に悪影響を及ぼし続ける状態を「疾病」に認定した。「ゲーム障害」という名称で、「国際疾病分類 第11回改訂版」(ICD-11)に追加した。この「ゲーム障害」という言葉が、以前有名になった「ゲーム脳」のように独り歩きしてしまう危険がある。

「ICD-11」の定義では、「ゲームの優先度が日常生活よりも高くなり、個人、家族、社会、学業、仕事などで重大な問題を生じてもゲームを続けてしまう状態が少なくとも12か月以上続いている状態」をゲーム障害と診断する。深刻な症状が発生している際は、定義より短い期間で認定する場合もある。

治療法の確立や理解の促進が期待される一方で、このゲーム障害という言葉だけが先行し、ゲーム自体の印象を下げてしまう危険性がある。その前例としてあげられるのが「ゲーム脳」だ。

ゲーム脳とは、ゲームやPCの操作が脳に悪影響を与えている、特に情動抑制や判断力などの機能を司る脳の前頭前野にダメージを与えているとする仮説のこと。一般に知られるようになった2000年代前半には、「ゲームのことしか考えられない」や「ゲームと現実の区別がついていない」などの状態を指す言葉としても用いられた。

なお、ゲーム脳は、脳波を測定することで発見したとされているが、実験方法の正確性や発表時に使用された専門用語の誤用など、さまざまな点が疑問視され、現在は明確な根拠をもたない仮説として扱われている。

一方、今回話題になっているゲーム障害は、先述した通り、ゲームが日常生活に悪影響を及ぼしているか否かに焦点をあてている。イメージとしてはアルコールやギャンブルへの依存症に近い。

気をつけたいのは、ゲーム脳同様に本来の意味からかけ離れた解釈をされてしまうことだ。安易に「ゲーム障害」という言葉が乱用されると、「ゲーム=悪いもの」というイメージがつきかねない。

6月20日に開かれた会見で、菅義偉内閣官房長官は、「ゲーム産業は重要な産業の一つとして位置づけられている」と語った。直近ではゲームを競技として捉えるeスポーツが五輪競技に採用される可能性があるなど、国も無視できない存在に変化してきている。

同じ会見で菅義偉官房長官は、「ゲーム障害については、これまでも精神福祉保健センターで相談支援を行ってきている。今後、まずはその実態について調査研究を行い、その結果を踏まえ、対応をしっかりしていきたい」と話している。誤解を防ぐためには、具体的な症状や予防策、治療法を確立することが先決だ。WHO加盟国の早期の対応が期待される。(BCN・南雲 亮平)

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