役所広司、『蜩ノ記』で映画作りの極意を学ぶ

2014.10.6 11:41配信
役所広司演じる『蜩ノ記〈ひぐらしのき〉』の戸田秋谷(C)2014「蜩ノ記」製作委員会

直木賞受賞小説を『雨あがる』の小泉堯史監督が映画化した『蜩ノ記〈ひぐらしのき〉』。役所広司が演じたのは、ある罪による切腹が3年後に迫った郡奉行・戸田秋谷だ。

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その運命の日までに藩の歴史「家譜」を完成させることを命じられた秋谷と、彼の監視役になる青年武士・檀野庄三郎との絆の物語を軸に展開。

「秋谷にはとても3年後に腹を斬って死ぬ人とは思えない普通さがありますよね」。そう語った役所に「その境地は理解できましたか?」 と聞くと、「できません」という素直な答えが返ってきた。「だから自分なりに研究するわけですよね。秋谷はどんな人なんだろう? どんな話し方をし、仕事にどう取り組んでいたのだろう? って」。

その助けになったのが「小笠原流」の作法や所作だ。「これまで出演した時代劇は浪人の役ばかりで、城務めをしているような役は初めてだったんですけど、小笠原流から背筋が伸びるようなものを教わりましたね」。だが、その作法を覚えるのが大変だった。「特に食事のシーンですね。食べる順番が決まっていて、食べるものによって箸の持ち方も変わるんです。おかずを取るときにほかの食べ物の上を通過させてはいけない、お吸い物を飲むときにお椀から箸の先を出してはいけないという、細かい決まりもある。でも、その統一された作法が登場人物を美しく見せていると思います」。

庄三郎役の岡田准一とは意外にも今回初共演だが、「岡田くんは時代劇が似合いますよね」と絶賛。「彼は武士の扮装をしても刀を振っても様になる。武道の先生で、踊りを長年やっているから身体で覚えるようなことは吸収するのが速いんでしょうね」。

そんな役所も、本作ではその血を受け継ぐ小泉組の現場で黒澤明監督の映画作りの極意を学んだ。「準備の仕方が違いますよね。スタッフが画に映らないことも勉強し、周到に準備をしているからあり得ないと思うような装飾品はひとつもない。逆に役者がめくるかもしれないから、本の中身も結構書いてあるんです」。「黒澤さんの映画作りは宝物だし、大変な教科書じゃないですか!」と言葉に力が入る。「若い俳優さんたちもこういう映画作り方を知れば、日本映画がもっと豊かになると思いますね」。

役所広司という俳優が面白いのは、『蜩ノ記』のような格調高い作品に出演したかと思えば、『渇き。』のような気鋭監督の作品で破天荒な役にも挑戦するところ。「面白そうなことをやっているらしいって聞いたら行ってみたいじゃないですか(笑)。それに、この歳になると立派な人の役が増えてきますけど、ひと色には染まりたくない。映画もお客さんの希望を叶えるものと、お客さんが知らない世界を見せて楽しんでもらえるものの両方があっていいと思います」。そうなると、『ガマの油』に続く2本目の監督作が気になる。「監督はまたやりたいですよ。短い人生、やりたいことをやりたいですよね(笑)」。

『蜩ノ記〈ひぐらしのき〉』
10月4日(土)より全国公開

取材・文:イソガイマサト

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