MWC上海のSDアソシエーションブース

【上海発】メモリカードおよび対応機器の規格策定を行うSDアソシエーションは、中国・上海で開催されているモバイル通信関連展示会「Mobile World Congress Shanghai 2018」で、新規格となる「SDUC」および「SD Express」を発表した。SDUCは記憶容量、SD Expressはデータ転送速度の拡張を目的としている。

当初規格では最大容量2GBだったSDメモリカードは、最大32GBのSDHC(High Capacity)、最大2TBのSDXC(eXtended Capacity)と拡張されてきたが、今回発表されたSDUC(Ultra Capacity)では128TBまでの容量に対応。また、規格上はmicroSDカードサイズの「microSDUC」も用意されている。

従来のNANDフラッシュメモリでは、SDカードの筐体内に物理的に搭載できる容量は1TB前後が限界とみられるが、近年NANDベンダー各社は、3D NANDやQLC(クアッドレベルセル)など、より高い記憶密度を実現する技術の採用を拡大している。SDXC規格の上限である2TBを超える製品の登場に備え、新規格で将来的な拡張性を確保した。

また、現在のところ市販品として一般に入手可能なSDメモリカードは最大512GBだが、メモリーカードのODM供給や、コントローラーICの開発を行う台湾のファイソンは、今年第3四半期にも1TBのSDXCカード、年内にも1TBのmicroSDXCカードの提供を開始するとしている。

高速規格となるSD Expressは、形状は従来のUHS-II対応カードと共通だが、バスインターフェースとしてUHS-IIの代わりにPCI Expressを使用したもので、規格上のデータ転送速度は、UHS-II比3倍以上の985MB/秒を実現する。高速SSDに利用されるプロトコルのNVMeを採用しており、SSDのパフォーマンスと、メモリカードの利便性を両立する。なお、UHS-IIとSD Expressに互換性はなく、SD Express対応カードは、UHS-I以下のインタフェースまたはSD Expressでの動作となる。

SD Expressは発熱が大きくなることから、民生用機器ではなく主に産業用途を想定するほか、microSDカードサイズの製品は規定されていない。自動車や高解像度の監視カメラ、IoT機器の情報を集約するエッジサーバーなどで、大容量データの処理・記録ニーズが拡大するとみられており、従来は組み込み用のフラッシュメモリやSSDを用いていたそれらの機器で、SDメモリカードをストレージとして利用できるようにする。ストレージ不具合の修復や、大容量コンテンツの更新時、カードを入れ替えるだけで対応が完了するので、メンテナンス性の向上が期待できる。(BCN・日高 彰)