ノーベル賞作家ユージン・オニールの初期の傑作『アンナ・クリスティ』を、栗山民也が演出。タイトルロールのアンナ・クリスティを、舞台出演は13年ぶりとなる篠原涼子が演じる。

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2005年の『天保十二年のシェイクスピア』(蜷川幸雄演出)以来、舞台から遠ざかっていた篠原。実力派として数々の作品に出演してきた彼女だが、舞台に関しては「自信がなくてやれなかった」と切り出す。「役の心情としては同じかもしれませんが、すべての角度から見られてしまう隙のなさであったり、アップがない分、体全体で表現しないといけない部分であったり。それらすべてを意識して2時間近く見せる舞台というのは、ものすごくパワーが必要なものだと思うんです。それでも自分の中に刺激的なスパイスを含めていきたい。さらに沸き立つような大切な何かを見つけたい。そんな思いから、この舞台をやらせていただくことを決めました」

物語はアンナという女性が、15年ぶりに船乗りの父クリスと再会するところから始まる。幼いころに親戚から虐待され、さらに娼婦となり身も心も傷ついたアンナは、自らの過去を隠し、父に助けを求めにきたのだ。「すごくかわいそうな人だと思います。ものすごく寂しがり屋ですし、でもその寂しさを人に見られたくないと思っている。強がってここまで生きてきたのかなって。でもすごく情が深くて、愛に飢えていて…。だからこそ彼女が人を愛した時に、ものすごく深い愛情を注げるのだと思います」

アンナと父の乗る船に、命からがら助けられたのが火夫のマット。その存在が、アンナを大きく変えていく。「マットはすごく熱い人なんですよね。会った瞬間に“好きだ、結婚しよう!”って言ってしまえるような。常にポーンと投げ捨てられ、物のように扱われていたアンナのことを、心の底からマットは愛してくれる。彼が向ける強い眼差しに、アンナはすごく惹かれたんだと思います。でもそれだけ好きで、大切な、そして不器用な人だからこそ、騙すような真似は出来ない。そう考えたアンナは身を引こうとするわけですが…」

マットを演じるのは、役柄同様の熱さをもつ佐藤隆太。「佐藤さんご自身ものすごく熱い方ですし、作品に対してもとても熱意を注いでいらっしゃる。マットになり切っている感じがするので、私も早く追いつかなきゃいけないですね」

アンナという未知なる役を通し、篠原がどんな新たな1面を見せてくれるのか。その幕開けを待ちたい。

舞台『アンナ・クリスティ』は7月13日(金)から29日(日)まで東京・よみうり大手町ホール、8月3日(金)から5日(日)まで、大阪・梅田芸術劇場シアター・ドラマシティにて上演。チケットは現在発売中。

取材・文:野上瑠美子