『誰よりも狙われた男』(C)A Most Wanted Man Limited / Amusement Park Film GmbH (C)Kerry Brown

先ごろこの世を去った名優フィリップ・シーモア・ホフマンの最後の主演作『誰よりも狙われた男』が17日(金)から公開される。圧倒的な存在感と繊細な演技で観客を魅了してきたホフマンは本作をどう捉えたのだろうか? 生前の彼が作品について語った貴重なインタビュー映像が解禁された。

フィリップ・シーモア・ホフマンが語るインタビュー映像

本作は、『裏切りのサーカス』の原作にもなった『ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ』や『寒い国から帰ってきたスパイ』など数々の傑作で知られるジョン・ル・カレの同名小説を映画化したもの。ホフマン演じるギュンター・バッハマンは、ドイツ・ハンブルクにある小さなテロ対策チームに所属しており、密入国したイッサという若者をあえて“泳がせる”ことで、テロリストに資金提供している大物を狙う計画を立てるが、イッサの弁護士やイッサが接触する銀行の経営者、CIAなど様々な勢力が参入し、事態は錯綜していく。

「政府やスパイ組織といえば派手に描かれることが多いが、実際はそんなことはない」と語るホフマンは本作で、組織の軋轢と戦いながら己の信念を貫こうとする男バッハマンを演じた。彼は“華麗なスパイ”とはほど遠く、つねに酒とタバコを手放さない中年男だが、ホフマンの重厚で味わい深い演技は役を見事に捉えており、完成した映画はホフマン曰く「とても人間臭い、本当に人間らしさを描いた作品」だという。

ホフマンらを導き、リアリティのある諜報戦を描き出したのは『コントロール』『ラスト・ターゲット』のアントン・コービン監督。ミュージック・ビデオなどを手がけ、スタイリッシュな映像で知られる人物だが、ホフマンは「彼はすべてをユニークに捉える。僕たちが納得するまで見守ってくれて、邪魔をせず、好きにやらせてくれるんだ。完成した映画を観たけど彼は素晴らしい仕事をした。大きなハートを持ち、芸術的センスが非常に鋭い」とその手腕を高く評価する。

本作は複雑に絡み合う人間関係や、緊迫する諜報戦を描きながら、様々な問題や対立を抱えながら生きる人々の“生々しい姿”を見事に描いており、ホフマンは「この映画は必ず心を揺さぶる。広い視野と心で観れば、素晴らしい議論を巻き起こすだろう」と完成度に自信を見せる。残念ながら彼の主演作はこれで最後だが、本作での彼の演技や、この映画が描き出すメッセージは公開後も多くの人々によって語られ、議論され続けるのではないだろうか。

『誰よりも狙われた男』
10月17日(金)TOHOシネマズ シャンテほか全国公開

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