『いやおうなしに』 『いやおうなしに』

ファンクバンド「Only Love Hurts(面影ラッキーホール)」の紡ぎ出す曲が音楽劇になる。『好きな男の名前腕にコンパスの針でかいた』『あんなに反対していたお義父さんにビールつがれて』といった曲のタイトルからもわかるように、その世界はあまりにも独特。だが、だからこそ面白いと乗ったのが、古田新太だ。果たしてどんな舞台になるのか。音楽劇『いやおうなしに』について語ってくれた。

今回の企画は、演出を手がける河原雅彦の、「Only Love Hurts(面影ラッキーホール)」の曲を使った音楽劇を古田新太でやりたいという思いから始まった。打診された古田は即決。「アルバムとシングルCDをすべて持っているぐらい、おいらも『面影』が大好きなんです。いいなと思うのは、歌詞がひどいところ(笑)。だから今回の舞台も、ひどい話になるんだろうなと期待しているんです」。河原にしろ、脚本を担う福原充則にしろ、ひねりの効いた喜劇はお手のもの。現段階では、古田演じる下町の食堂の店主と、そこに集まる人々が描かれる予定だが、「たぶんみんなだらしない人たちなんでしょうね(笑)。ただ、『面影』の歌詞が不幸で重い分、バカらしい軽い話になればいいなとは思ってます」。

共演には、妻役の小泉今日子、娘役の高畑充希などが揃った。男性ボーカルの「Only Love Hurts(面影ラッキーホール)」の歌を女性が歌うことによる化学反応も、古田は楽しみにしているらしい。「あの不幸な女の歌をキョン吉(小泉)とか充希ちゃん(高畑)が歌う。それだけでも面白いですよね。キョン吉とは舞台では初共演なんですけど、『できない』ということを一切言わないプロフェッショナルですから。どんなひどいことでも抗わずにやってくれるはすだと(笑)、頼りにしています」。

そう話す古田自身も、もちろんNOを言わない役者だ。「おいら、アドリブをやる人だと思われがちですけど、細かく演出してもらうほうが好きなんです。言われたことは何でもやります。ましてや、舞台はタブーの少ない場所ですからね。やりたい放題やっていいと思ってるんです」。その意味では、「Only Love Hurts(面影ラッキーホール)」の身もふたもないような世界を描く今作は、まさに、舞台でしか味わえないものが体感できるはず。「だから、この機会に、『面影』ファンや音楽好きの人も、ぜひ舞台を経験してほしいなと思いますね。今のところ、面白くなる要素しかないですから。安心して劇場に来てください(笑)」。

音楽劇『いやおうなしに』は1月9日(金)神奈川・KAAT 神奈川芸術劇場 ホールより開幕。その後、埼玉、愛知、東京を周る。なお現在、神奈川、埼玉、愛知公演の先行抽選プレリザーブを実施中。受付は神奈川、埼玉公演が10月13日(月・祝)午前11時まで。愛知公演が10月16日(木)午前11時まで。

取材・文 大内弓子