(左から)高橋泉、篠崎誠監督、廣木隆一監督、塚本晋也監督

アジアを中心に芸術性の高い作品を上映し、映画ファンから絶大な支持を得ている東京フィルメックスの本年度ラインナップ発表会見が15日に都内で行われ、特別招待作品としてオープニング上映される『野火』の塚本晋也監督をはじめ、廣木隆一、篠崎誠、高橋泉ら上映作品を手がけた監督4人が出席した。

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塚本監督の『野火』は、第二次世界大戦末期のフィリピン戦線を舞台に、ひとりの日本兵の視点から戦争の恐怖を訴えかけ、今年のヴェネチア映画祭で絶賛された一作で「戦争を描いているが、映画は思想ではなく、あくまで芸術でなければいけない。日本が急速に戦争に傾く恐ろしさに、フィルメックスが共感してくださった」と縁深い映画祭での上映に、強い思いを語った。

廣木監督は前田敦子と染谷将太が共演する『さよなら歌舞伎町』、篠崎監督は震災後の心の傷に葛藤する女性をスリリングに描く『Sharing』をそれぞれ上映。「涙あり、笑いあり、裸あり(笑)でフィルメックスの中では一番ラフな作品かもしれない」(廣木監督)、「11年に審査員をさせてもらい、映画を観ることからエネルギーをもらった。作品の上映は(第1回以来)14年ぶりなので、いささか緊張している」(篠崎監督)と心境を明かした。

一方、コンペティション部門はイスラエル、イラン、フィリピン、韓国などから9本がエントリーされ、唯一の日本映画『ダリー・マルサン』のメガホンを執った高橋監督は「吐き出す思いでつくった作品を、拾ってくれる熱をフィルメックスに感じる。作品をしっかり観ていただける映画祭」と敬意を表した。

同映画祭のディレクターを務める林加奈子氏は「コンペ作品の共通したテーマを強いて挙げれば、闇を描いているという点。世界、時代、心の闇を深く掘り下げ、明日への光明を求めている」と指摘し、「特別招待も含めて、濃厚で深い映画ばかり。ぜひご期待していただければ」と自信を示した。コンペティション部門の審査委員長を、中国が世界に誇る名匠ジャ・ジャンクーが務めることも決定し「長年の念願だったので、本当に光栄で嬉しい」と話していた。

第15回東京フィルメックス
11月22日(土)から30日(日)まで
有楽町朝日ホール、TOHOシネマズ日劇にて開催

取材・文・写真:内田 涼