プロジェクトを任せてもらいたい。仕事を発注してほしい。

どんな職種の仕事をしていても、取引先や社内の上層部にプレゼンテーションしなければならない時代になりました。自分の仕事ですら手一杯になりがちです。確実に仕事を任せてもらえる保証がないのに、誰にでも分かる説明をしなければならない。プレゼンテーションの作業に、負担を感じている方も多いのではないでしょうか。

マイクロソフト社のパワーポイントなど、プレゼンテーションをサポートしてくれるソフトウエアを使うことも多くなってきました。とはいえ、苦心して図表を散りばめた資料を作っても、実際のプレゼンテーションがうまくいかなかったという経験をお持ちの方も多いと思います。

また、人前で話すことにも慣れていないし、納得できる資料が出来ないまま臨んだプレゼンテーションなのに、取引先や上司から絶賛されて拍子抜けした。こういったケースもあるはずです。この違いを偶然と片付ける人も多いでしょう。実は、口べたな方、説明下手な方ほど、取引先や上司から絶賛されるプレゼンテーションになることが多いのです。
 

口べたな人が成功したのは、「メリットを先に話したから」

口べただし、自信がないのに上司や取引先から絶賛されて拍子抜けした。
偶然だと思うのは無理もありません。でも、よく思い出していただくと、ほぼ間違いなく「相手にとって何がメリットになるか」を一番最初に伝えているはずです。

口べたな人は、人前で話す時間をできるだけ短くするために、相手にとってどういったメリットがある話かに絞って話をするようになると思います。結果として、プレゼンテーションの当初に、相手にとってメリットになることを話すので、伝え方が下手でも絶賛されることがあるわけです。

ちょっと実験してみましょう。下のふたつの文章を読んでみてください。

A ベルギー産の最高級チョコレートを使用し、1000円でご提供させていただけるよう工夫しています。形が欠けてしまったりしてご贈答用には使えない商品を有効活用しているからです。

B 形が欠けてしまったりして、ご贈答用には使えないベルギー産の最高級チョコレートを使用しています。そのため、1000円という価格でご提供できるよう工夫できました。

A,Bどちらの文も、同じことを伝えています。ですが、大多数の人はAの文章のほうが、自分にメリットがあると感じるのではないでしょうか。

Aの文は、「ベルギー産の最高級チョコレートを使っていて、1000円で買えるお得な品物」というメリットを、先に伝えているだけですね。形がくずれてしまって使えない「わけあり商品」を利用しているというデメリットを後から伝えています。ある意味ずるい説明ともいえます。それなのに、Aの説明方法を大多数の人が支持するのは、最初に伝えられたことしか印象に残りにくい「初等効果」という心理的な作用のためです。