「自分らしくあること」

あの人のようになりたい。少しでもあの人に近づきたい。誰でもそう思ってしまうものだが、ジョンソンはそれを否定する。

「一番大切なのは、自分自身でいることだ。自分を認めること。自分を愛すること。まずはぞこから始めなくてはいけない。誰かに憧れるなら尚更そうあるべきだと思う。そうすれば、自暴自棄になることも、自分を見失うこともなくなく”ゴーイング・マイ・ウェイ”で憧れに近づけるだろ。5歳のときからヘラクレスに憧れていたオレは、その夢を実現するためにこれだけの時間がかかってしまったが、もっとも理想的なかたちでヘラクレスになれたんだ」。ということは、焦ることも禁物、と言えそうだ。

「恩返しを忘れてはいけない」

 

プロレス界から映画界に転向したジョンソンだが、プロレス界を忘れてしまったわけではない。映画界の頂点に立った2013年には再びWWFに復帰し、見事王座まで獲得したのだ。

「今のオレを誰が育ててくれたのか? 答えはプロレスのファンたちだ。だからオレは彼らに恩返しするつもりでリングに戻ったんだ。みんなが拍手で迎えてくれて、本当に嬉しかったよ」。

古巣を大切にし、その恩返しをする。そうすることで、古いファンを喜ばせ、新しいファンも獲得することも出来るということ。”温故知新”の精神なのだった。

 

「シンプルに生きろ」

これだけの大成功を収めたジョンソンなのだが、その人気におごることはない。

「確かにいまのオレは最高の位置にいるだろう。それを謙虚に受け止めている」。

 

一番の自慢は何かという問いにも「いい父親であること」と頬を緩ませ”謙虚”な答えを返してくる。また、男として、そこまで強くなれる原動力はという問いには「家族」と即答。そして「家族といるときは出来る限りシンプルにしている。彼らと一緒に喜怒哀楽を味わい、そんな人生の大切さをかみ締め、また映画製作という戦場に戻るんだ。ハリウッドはとても複雑な世界だからこそ、家族といるときは限りなく普通にシンプルにしているんだ」。

ちゃんと癒しの場所を作り、それを守る。男である強さと優しさを、家族を大切にすることで手に入れているジョンソンなのだった。

 

わたなべ・まき SFビジュアル誌の編集を経てフリーに。得意分野はSF&ファンタジー系。ティム・バートンとピーター・ジャクソンをこよなく愛する。現在は「TVブロス」「SFマガジン」等で執筆中。