休日に隣にいて何気ない日常を共有している恋人。彼または彼女を見て、触れて、会話をするときにふと、自分の気持ちについて考えたことはありませんか。この感情は「恋」なのか、それとも「愛」なのか、と。誰もが人を好きになる度に、恋愛初期・中期・後期のそれぞれでそんな思いを巡らせたことがあるはず。

今回は「恋」と「愛」の違いについて、辞書の記述を元に読み解いていきます。

 

国語辞典から見える、恋と愛の差分は?

国語辞典から恋と愛に関する記述をすべて抜き出してみました。


こい【恋】異性に愛情を寄せること、その心。恋愛。「ーは盲目」。(恋をすると無分別になる)△本来は、(異性に限らず)その対象にどうしようもないほど引きつけられ、しかも、満たされず苦しくつらい気持を言う。「ーに焼けて死ぬ虫になったって、思いはとげて見せるぞ」のような用例から見て取れるとおり、心の活動(やその内容)を言う「思い」とは区別される。「ーは美し、野辺の花よ」のような言い方は、1910年代ごろからのもの。

あい【愛】そのものの価値を認め、強く引きつけられる気持。(ア)かわいがり、いつくしむ心。「子にそそぐー」。いつくしみめぐむこと。「神のー」「人類ー」。(イ)大事なものとして慕う心。「母へのー」。特に、男女間の慕い寄る心。恋。(ウ)その価値を認め、大事に思う心。「真理へのー」

(『岩波国語辞典 第五版』より)

両者の差は見えてきましたか? 恋は旧来、異性以外の対象も含んでいたこと、また「苦しくつらい気持」から心が不安定な状態にあることがわかります。

一方、愛は「大事なものとして慕う」「大事に思う」から心は安定した状態にあります。対象となるものを慕ったり、価値を認めたりするのは、自身の心に余裕がない限りできないこと。

ただし「対象に強く引きつけられる」といった要素は、両者に共通しています。心の安定度とは関係なく、対象に恋する/対象を愛する理由の有無を問わず、それに目を向け、考えずにはいられない状態を指す点では同じです。