相手のすべてを受け入れ、赦したいと思うーーそれが愛

愛についても考察していきます。愛にまつわるキーワードは前出のように「価値を認める」「引きつけられる」「大事に思う」の3点。これらを総合すると、ありのままの対象(恋人)を唯一無二の存在として、自分の中に位置づけるといった意味を表します。

イタリアの小説家ディエゴ・ファブリ(故人)も「愛とは相手に変わることを要求せず、相手をありのままに受け入れることだ」と名言を残しています。対象の価値を認めることはつまり、相手の本質的な部分・素の部分・むき出しの部分を含めて「そのままでいい」「そのままがいい」と好意的に迎え入れること。

とはいえ、100%完璧な対象(恋人)はいません。どんな相手であれ、良くも悪くも気になる部分は存在します。それらの部分を差し置いても、相手の“幹”となる部分を見て、すべてを受け入れようとするのが愛です。これは「すべてを赦そうと思える」感情に近い。

愛は恋よりもスケールが大きい概念です。恋の期間を経て、対象を一歩引いたところから見られるようになるのが愛。安定したおだやかな気持ちで対象を見つめ、対象と関わり、対象を価値あるものとして認めるのが愛。恋を経験した人でないと、辿り着かないのが愛の境地です。

恋と愛との違いについては、遥か昔から偉人や市井の人が考えを巡らせてきました。人の数だけ思想や解釈が存在する大きなテーマでもあります。それゆえにここで結論が出たとは思っていません。皆さんが恋する相手、愛する相手と共に恋と愛をテーマに語る奥深い時間を過ごすことを願っています。

フリー編集者・ライター。岡山県出身。中央大学法学部卒業後、楽天、リアルワールドを経てフリー編集者/ライターに。関心のあるテーマは女性の生き方や働き方、性、日本の家族制度など。結婚・離婚を一度経験。11月14日に『はたらく人の結婚しない生き方』を発売。