元住吉祥平役の斎藤工

 漫画家の夢破れた鈴愛(永野芽郁)の新たな人生を描く「人生・怒涛 編」で、鈴愛が出会う“魅惑のだめんず”の一人で、いっこうに新作が撮れない芸術家肌の映画監督・元住吉祥平を演じる斎藤工。今年公開された初の長編監督映画『blank13』で映画監督としての才能を世に知らしめた斎藤が、「大きな必然」を感じて引き受けたという本役に懸ける熱い思いを語ってくれた。

-出演に至った経緯を教えてください。

 2年ほど前に初めて(脚本の)北川(悦吏子)さんの作品「運命に、似た恋」(NHK総合)に参加させていただいて、その打ち上げで、北川さんと原田知世さんと3人で話していたときに、ご本人から「今度書く朝ドラに縁があったら出て」と声を掛けていただきました。とはいえ、歴史ある朝ドラというブランドに、自分のニーズはあるのだろうか…、朝向きの顔面もしていないし…と、半分社交辞令と捉えていました。

-しかし、本当にオファーがきたのですね。

 そうです。この出会いは大きな必然で、去年でも来年でもなく、今の自分が北川さんから頂いたメッセージのような役柄だと思いました。

-監督として初の長編映画『blank13』を撮られたばかりの今だからこそ、必然を感じたということですか。

 はい。北川さんには早い段階で『blank13』を見ていただいていたので、それが北川さんの中で僕を起用する要因になったかもしれません。それに北川さんが、どこかの映画祭での僕の監督としての表情を写した写真を見て、「このイメージいいね」とおっしゃってくださったことがあったので、僕の表層的じゃないエモーショナルなところを軸にして、役を膨らませてくださった気がしました。

-北川さんは当て書きをされていますから、かなり共感する部分があるのでしょうか。

 もちろん相通ずるものは感じます。でも、この役には僕という枠以上に、僕が見てきた映画監督という職業のアクが切り取られていると思いました。日本の映画監督が置かれている環境は諸外国と比べると劣悪で、どれだけ映画がヒットしても、それだけでは生活ができないのが実情です。そういう90年代から現在に至るまでの映画監督たちの思いが託されていたり、自分が業界に抱く悲哀が表されたりしていて、迫りくるリアリティーを感じます。

-元住吉は鈴愛の運命を大きく変えるキーパーソンとなりますが、永野さんとの共演はいかがでしたか。

 初めてお見かけしたのは、リハーサル現場をのぞいたときですが、気絶したように眠っていらして、朝ドラのヒロインが背負っているものはすさまじいな…と思ったし、みずみずしく輝いている姿や、パッション、底知れぬ才能には衝撃を受けました。鈴愛になった瞬間に発せられる成分も圧倒的で、それによって僕もリアルに演じられたと思います。

-元住吉が運営する映画会社「クールフラット」の助監督・森山涼次役の間宮祥太朗さんとの共演にも注目が集まっていますね。

 彼とは、節目節目で作品を共にしていて、撮影直前まで民放(テレビ朝日系ドラマ「BG~身辺警護人~」)でもご一緒していたので、(画面に映ったときの)並びの変化をつけたいという意識はありました。そこで、僕は演じるときにはならないけど、作り手になるとストレスなのか、10円はげができたり、白髪になったりするので、それを提案したら、白髪が採用されました。間宮くんも「BG」とは違う雰囲気で臨んできたので、お互い考えていることは一緒だなと思ったし、役との関係性につながった気がしました。

-ビジュアル以外で事前に準備されたことはありますか。

 元住吉が4年前に海外で映画賞を受賞した『追憶のかたつむり』という作品のタイトルがキャッチーで見たくなったので、もともとある程度の内容は決まっていましたが、自分なりの解釈で1日かけて撮影したものを本編で使っていただいています。僕が映画を作っていることは古い付き合いの間宮くんは知っているし、この映画は涼次が元住吉のもとに来るキーとなる作品なので、そこに流れているものが斎藤工の成分を踏襲したものであれば、元住吉と涼次の関係性がより太くなると思って提案させていただきました。

-『追憶のかたつむり』はどのようなストーリーなのでしょうか。

 現在の姿がカタツムリで、かつての人間だった時代がメインストリームです。カタツムリの部分はパート2まで撮りました。他の出演者はナメクジで、天敵なのか、恋人なのか…。放送時間を考えて、カタツムリの描写は視聴者が「朝ご飯をこれ以上食したくない」とならないように仕上げてあります。人間のパートも、いつか撮って完成させ、できたら独立した作品として、いろいろな映画祭に出したいという野望もあります(笑)。

(取材・文/錦怜那)