OOPARTS Vol.2 『SHIP IN A BOTTLE』 OOPARTS Vol.2 『SHIP IN A BOTTLE』

鈴井貴之率いるOOPARTSの待望の新作『SHIP IN A BOTTLE』が11月1日、東京グローブ座で開幕した。舞台上にはシーソーが、なんと12台! 俳優たちはギッタンバッタンと舞台上を飛び回る、命がけの舞台だ。

OOPARTS『SHIP IN A BOTTLE』

閉ざされた空間に興味があるという鈴井が今回選んだ題材は、洋上のマグロ漁船。刑務所の経費削減のため、犯罪者を遠洋漁業に従事させている海上刑務所なのだ。乗っているのは様々な過去を抱えた犯罪者たち。町中で全裸になった大宮(大内厚雄)、小銭窃盗の常習犯・鳥居(三津谷亮)、下着泥棒の犬山(諏訪雅)、偽装結婚した女・小杜A(石田剛太)、船酔いがひどい元公務員の井座波(納谷真大)。そして船長(藤村忠寿)と機関士の異国人・ビン(鈴井貴之)。犬山の目にだけ映る小杜B(熊川ふみ)も登場する。

幕開きは嵐の海、傾斜した舞台上を転げまわる俳優たち。そして嵐が過ぎ去ると一転、傾斜舞台は横向きに4台×3=12台の稼働式シーソーに早替わりする。難破寸前の船の物語だから揺れる芝居だろうとは思っていたが、リアルに揺れる迫力満点の舞台セットにびっくり。俳優たちはシーソーの上をバランス取りながら動きまわる。バタンと上下が何度も入れかわるシーソーが不安感をあおりたてる。観客もビクッと、緊張が広がる。

ほとんど話したことがなかった犯罪者たちだが、生き残るためには力を合わせなくてはならない。しかし、勝手な主張をするばかり。そのうち、死んだと思った船長が生きていたり、意外な過去があぶりだされたりと、物語は二転、三転、四転、五転……!?

体力勝負のアスレチックのような装置、船上の男臭い生き残り合戦。ハードな設定だが、そこは「水曜どうでしょう」(HTB)のミスターこと鈴井の作・演出だけに、笑いもふんだんに盛り込まれる。今回は藤村ディレクターの出演も話題だが、新人俳優離れしたとぼけた愛嬌と度胸で次々と爆笑を巻き起こす。さすがの名コンビだ。

ところが、この笑いも落とし穴。ふと気づくと、ぞわぞわと恐怖が押し寄せている。小さな犯罪の奥に潜む大きな現実。漁船の積み荷の秘密を知ると、自分の足元がシーソーになったかのような不安感にさいなまれる。ビンの故郷の場面では、舞台上でただ黙って空を見つめる鈴井にくぎ付けになる。ビンの目に、このニッポンはどう映っているのか。今、目の前にある物語は本当なのか、何が真実なのか。

流行りの映像効果や、派手な音楽は一切ない。あるのは役者の生身の肉体と、言葉だけ。潔く体当たりで挑む舞台から届くエネルギーは濃密だ。揺れるニッポンで、どうやってバランスを取ったらいいのかもわからない毎日。それでも進み続けなくてはというパワーをもらえる舞台なのだ。

公演は11月9日(日)まで。チケットぴあでは東京公演の当日券・前日販売をWEBと電話で受付中。なお、東京公演の後、大阪、名古屋、札幌を巡演。

取材・文:田窪桜子

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