福井市に本社を置き、主な営業拠点が石川県金沢市にあるサンキュー。金沢市の6店舗のなかで旗艦店にあたるのが、100満ボルト金沢本店だ。サンキューが金沢に進出して25年が経過した節目の今年、大幅改装を行い、10月25日にリニューアルオープンした。オーバーストア状態にあって価格競争が激しくなるなか、お客様が望む品揃えやサービスを提供して、地域No.1店舗としての地位を不動のものにする。(取材・文/佐相彰彦)

100満ボルト金沢本店

店舗データ

住所 石川県野々市市野代2-11

オープン日 2014年10月25日(リニューアル)

売り場面積 約8260m2

従業員数 100人弱

●激戦区からは離れた場所でお客様の「困った」を解決

石川県は、人口あたりの家電量販店の店舗数が多い地域。なかでも密集しているのが、金沢市に隣接する野々市市だ。県内で最も交通量の多い国道8号(金沢バイパス)沿いに、ヤマダ電機テックランド野々市店、ケーズデンキ金沢本店、アプライド金沢店などが出店している。各店舗とも、大型駐車場を完備して、お客様獲得競争を繰り広げている。

また、付近には飲食店や自動車販売店、アパレル専門店、ゴルフショップなどが建ち並び、休日にはショッピングに訪れる人が多い。そして、同じ野々市市で他店とは違い、金沢バイパスから少し外れた野代に出店しているのが、サンキューの100満ボルト金沢本店だ。

サンキューが石川県に進出したのは1989年。その後、福井県にあった営業本部を野々市市に移して、事実上、金沢周辺を営業の拠点に定めた。そのサンキューの全店舗のなかでも重要店舗に位置づけられる100満ボルト金沢本店が、10月25日、リニューアルオープンした。

サンキューの営業統括部第1営業部で石川富山エリア長を兼務する坂下和司店長は、「金沢地区に進出して25年。その節目の年に、お客様に対して何ができるのかを考え、リニューアルに踏み切った」という。そして、「オーバーストア化しているなかで、価格が安いというだけで商品が売れるという状態は、決して業界の発展につながらない。お客様の『困った』を解決する取り組みを進めて、信頼をきちんと獲得していく」と、坂下店長は金沢本店の姿勢を語った。

●時計とアウトレット商品を追加 話題商品のデモルームを設置

お客様の「困った」を解決するために、100満ボルト金沢本店が、まず品揃えに追加したのは、高級ブランドの腕時計だ。坂下店長は、「ブランド腕時計を販売している店舗は、実は金沢周辺には正規代理店しか存在していなかった」と説明したうえで、「正規代理店は、お客様にとってやや敷居が高いイメージがある。購入目的でなければ店に入ることができないと感じるからだ。当店のような家電量販店が取り扱えば、気軽に店を訪れて、ゆっくり品定めをして、ほしいときに購入することができる」という。

腕時計は、グループ会社のエディオンでも取り扱っている。「当店のスタッフは、エディオンの店舗で販売の教育を受けて、デジタル機器や白物家電と同様、正規代理店に負けないほどの知識とノウハウをもつまでになった。高級ブランドの腕時計を気軽に購入できる環境ができたと自負している」と坂下店長は自信を口にする。しかも、品揃えは「専門店を含めて北陸でNo.1」(坂下店長)だ。

リニューアルを機会に取り扱いを始めたもう一つの分野が、アウトレット商品。100満ボルトの各店舗で展示していた商品や、メーカーが展示会で使用した機器などを集めて販売している。価格は程度によって異なるが、通常で新品の2~3割引き、ときには5割引きで販売しているという。坂下店長は、「デジタル機器や白物家電を専門に扱うアウトレット店は少ない。家電量販店として、お客様が安心してアウトレット商品を購入できるように心がけている」という。

リニューアルで、以前から取り組んでいた商品のデモンストレーションの充実にも取り組んだ。「気になる商品について、じっくりと体感できるデモルームを設けた」(坂下店長)。デモルームで扱う商品は、「新製品」「季節」「アニバーサリー」「新生活」など、定期的にテーマを変え、「お客様から好評」(坂下店長)だという。

お客様から最も支持をされているのが、サポートだ。「もともと金沢に進出するとき、修理センターから始まっている。今でも当店の向かいに修理やサポートに特化した店舗を設けている。ここで専門スタッフがお客様の要望に応えることで、他店とは異なる取り組みができる」と坂下店長はアピールする。

家族連れが気軽に来店できるよう、子ども向けアニメや戦隊モノのショー、サンキューがスポンサーになっているサッカーJ3のツエーゲン金沢の選手を招いての握手会などを実施。「家電量販店の立場から、お客様の生活を楽しくしたい」。これが、100満ボルト金沢本店が目指す姿だ。

●店長が語る人気の理由――坂下和司 店長

25年の歴史のなかで、100満ボルト金沢本店が最も評価されているのは接客。「お客様は、いい商品をお買い得感を満たしながら買いたい」。とくに「もったいない」の精神が根づいている地方部では、壊れてなければ商品を買わない。「しかし、例えばエアコンは10年前の機種より新しい機種のほうが省エネで、ランニングコストがかからない」などと、お客様に日頃から新機種のメリットを説明している。お客様は、買い替えたあと「やっぱり買い替えてよかった」と言ってくれるそうだ。「価格の安さではなく、商品のよさ、存在する意味をきちんと伝える」。これは、家電量販店全体で取り組むべきことだろう。

※本記事は、ITビジネス情報紙「週刊BCN」2014年11月3日付 vol.1553より転載したものです。内容は取材時の情報に基づいており、最新の情報とは異なる可能性があります。 >> 週刊BCNとは