12月12日(水)から20日(木)まで、東京・新国立劇場 中劇場で上演される『AY曽根崎心中』の製作発表が行われた。

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最初に映像で『AY曽根崎心中』の世界観を展開。近松門左衛門の心中物の傑作として有名な「曽根崎心中」がフラメンコと融合、日本的な情緒・情念を踊りと歌で表現し、全編がオリジナル音楽で構成された作品だ。2001年の初演時には文化庁芸術祭舞踊部門で優秀賞を受賞。それから17年の間、毎年再演を重ね、練られてきた。

今回、タイトルが『FLAMENCO曽根崎心中』から『AY曽根崎心中』に。プロデューサー・作詞を手がける阿木燿子は、「AYはスペイン語の“ああ”という感嘆詞。フラメンコという枠を超えて、ああ素晴らしい!と感じていただけるように、佐藤浩希さんの提案により改題しました。ライフワークとなった本作も今17歳。人間ならそろそろ選挙権を得る年頃。自立して歩き、羽ばたく作品になって欲しいです」と語る。

音楽監督・作曲の宇崎竜童は「音楽も変化します。通常のフラメンコの編成に加え、ピアノ、エレキベース、篠笛、和太鼓、津軽三味線2本が加わり、アレンジも変わります。阿木からは新曲を作れという要請があり、七転八倒中。実は昨年、スペインとの繋がりで、宮中晩餐会にお招きいただきました。下戸の僕は水と間違えて日本酒を飲み、何の記憶もありません!」と笑いを誘った。

その後、キャストが挨拶。「初演時、様々な挑戦が組み込まれたために必死に踊り、自分でも覚えていない境地に達した気がします。今回は新しいチームになります。私もがむしゃらに没頭した初演の記憶を辿って、この作品と向かい合いたいです」(お初/踊り 鍵田真由美)

「初演時は日本の古典を手がける重責を感じました。フラメンコは差別されて苦しい生活を送っていたジプシーが作り出した踊りです。ああ辛い、苦しいなぁと嘆いたところから、カンテ(ジプシーの嘆き歌)が生まれてきた。近松が描いた最下層の民衆の嘆きを重ね合わせたい」(徳兵衛/踊り 演出・振付  佐藤浩希)

挨拶のあとは、会見のためのダンスパフォーマンスが披露された。日本語の歌に合わせ、鎌田と佐藤の熱情溢れる踊り、手拍子、足拍子は、迫力の一言!壮絶なフラメンコに息を呑んだ。矢野吉峰の九平次も嫌味な男として存在感を光らせた。

質疑応答では、心中という究極の愛を描くことについて、「お初と徳兵衛の愛が長く人の心に残っていく。愛は不滅だとも思います。恋愛しなくなった男女が増えている今、もっと濃密に恋をして、命を燃やして欲しい」と阿木らしい恋愛論を訴えた。最近、失われつつある究極の愛、ぜひ本作で体感したい。

取材・文:三浦真紀