8Kの放送準備は着々と進んでいる

VHSで録画した昔のバラエティ番組を見る機会があった。当時、一本のテープで録画時間を稼ぐため3倍モードで録った映像だ。今にして思えば、よくもまあこんな映像を毎日見ていたもんだとあきれるほどだった。640×480のSD画質の放送を、さらに画質を落として録画しているわけだ。要するに映像が荒すぎて、細かいテロップの文字はほとんど判別できず、現在のハイビジョンや4Kといった映像のレベルからすると、おもちゃみたいなクオリティだった。

それが今やハイビジョンだ。自宅で初めて42インチ・フルHDテレビの電源を入れた時、こんなきれいな映像が家で楽しめるんだと、ある意味感動した。しかし、慣れとは恐ろしい。感動の画質も、今ではあたり前の日常になった。もちろん細かい文字やテロップが出ても確実に判別できるので情報を読み取りやすくなった。出演者の表情もよくわかるし、サッカーのような遠くに小さく選手が映っている映像でも背番号が十分判別できる。画像そのものも十分美しく、テレビを見ていてあまり不満は感じない。正直、いま流行の4Kテレビについては、あまり必要性を感じない。4Kの実力を発揮できるコンテンツが少なく、恩恵を受ける場面が少ないからかもしれないが。

しかし、8Kは別物だ。一度、NHK・放送技術研究所で450インチのスクリーンにプロジェクターで投影した8Kのコンテンツを見せてもらったことがある。白、赤、青、緑、黄色のドレスを着た女性が踊っている映像だ。おそらくほぼ等身大になるぐらいの大きさだった。カメラの角度と、座席から見ている角度が異なるので、多少の違和感はある。しかし、そのリアリティには本当に圧倒された。解像度の高さだけでなく、とても立体感のある映像に驚いた。実際に人が目の前で踊っているような錯覚をおぼえた。解像度がフルHDの16倍という桁違いのクオリティの高さを前に、8Kで映像表現の何かが本質的に変わるという強い予感がした。

世界初の4Kテレビ、55インチの東芝「REGZA 55X3」が発売されたのは2011年11月。当初の想定価格は90万円前後だった。55インチの4Kテレビの税別平均単価を追うと、翌12年には3割安の59万9000円、13年には4割安の36万7000円まで下落。昨年は18万9000円とついに20万円を切っている。初登場時の価格と比べておよそ8割安だ。

一方、世界初の8Kテレビは、17年12月にシャープが発売した70インチの「AQUOS LC-70X500」。想定価格は100万円前後だった。4Kテレビの下落率をそのまま適用すると、今年は60万円台まで下落し、五輪イヤーの2020年には30万円台に、23年には20万円台前半まで下がることも期待できる。こうなってくれば、我々一般の消費者にも十分手が届く。単純に計算すれば。

多くの家庭で8K放送を楽しむようになった時、一体何が変わるのか。あの強烈なリアリティで何を表現し、何を受け止めるのか。興味は尽きない。8Kテレビは必要だ。(BCN・道越一郎)

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