ゴジゲン第12回公演『ごきげんさマイポレンド』 ゴジゲン第12回公演『ごきげんさマイポレンド』

11月13日、東京・下北沢の駅前劇場にてゴジゲンの第12回公演『ごきげんさマイポレンド』が開幕した。2011年の本公演『極めてやわらかい道』を最後に活動休止を発表したゴジゲンにとって、3年ぶりの本公演となった今作。とはいえ、主宰の松居大悟いわく「活動再開というわけではなく、ひとまず一回やってみよう、という公演」とのこと。この先が未定ならば、今回はどんな舞台が繰り広げられるのか、なおさら気になるところだ。

ゴジゲン『ごきげんさマイポレンド』チケット情報

観客は客席入口で靴を脱いで劇場内に入っていく。中央には10畳ほどの畳、その上にはとび箱がひとつ。その周囲をぐるりと囲むように客席がつくられている。ひとり暮らしの部屋らしき家具が線画で描かれている壁。過去公演などのポスターが貼られた一角もある。配布された当日パンフレットにある「友だちの家に来たみたいな感じでたのしんでもらえたら」という手書き文字のメッセージ通り、高級でもきれいでもないが、なぜかなじみのある、妙に安心する部屋に来たかのような空気が漂っている。客案内をしていたキャストたちが誰からともなく「じゃあ、やるか」と声をかけると畳に足を踏み入れた。これまでの空気の延長線上だが、どうやら芝居が始まったらしい。

3年ぶりに集まった仲間たち。再会を喜ぶうち、ゴジゲンが休止していた3年の間にキャストそれぞれがどんなふうに過ごしていたかが次々に語られる。恋愛が修羅場に発展した者、就職したけれどうまくいかなかった者……。やがてあるひとりの役者の番になる。彼の語る内容は家飲みで語られる思い出話の枠を飛び越えてゆく。

松居が再びゴジゲンの公演を行った大きなきっかけは、看板役者であり、この3年間演劇から離れていた目次立樹をまた観たいという思いだったという。2006年の設立からずっと苦楽を共にしてきた相手への、これは松居からのメッセージのような作品だ。目次が役者の道に苦悩し、「正しい道」を求めて迷うこの3年間は重い。しかしそれを笑いという目の粗い布にくるんで私たちに見せてくれるこの手腕にこそ、松居の、そしてゴジゲンの面白さが詰まっている。彼らの友達のひとりのような気分で笑いながらエピソードを覗き見ていた観客たちは、気が付けば悲劇を笑いながらやり過ごす術を知るはずだ。そもそもタイトルの「ポレンド」が何なのかは、観に行けばわかるかもしれないし、わからないかもしれない。公演は11月23日(日・祝)まで。チケット発売中。

取材・文・釣木文恵