EBIKEN EBIKEN

人間離れした超絶的な動きで映画「マトリックス」やロボットを再現したかと思えば、日本の伝統芸能やダンス史に名を刻む舞踊家ロイ・フラーの世界も取り込む……。様々な工夫を凝らし、観る者を新鮮な驚きで満たすダンス・パフォーマー、蛯名健一(EBIKEN)が、2年ぶりの日本公演「EBIKEN The ENTERTAINMENT」を行う。

EBIKEN The ENTERTAINMENT チケット情報

蛯名といえば2001年、NYのアポロシアター「アマチュアナイト」で日本人初の年間総合チャンピオンとなり、2007年にはアポロシアターTV版「ショータイム・アット・ザ・アポロ」で7回連続優勝するなど、アメリカを拠点に目覚ましい活躍を続けて来た。そして昨年、ポール・ポッツやスーザン・ボイルを輩出した人気オーディション番組のアメリカ版「アメリカズ・ゴット・タレント(AGT)」で優勝。賞金100万ドルを獲得する快挙を成し遂げた。

実は、身体で表現するパフォーミングアーティストが、AGTで優勝したのは、蛯名が初めて。「それまでAGTに出場したパフォーミングアーティストは、最初良くても見慣れると負けてしまっていました。音楽の場合、聴けば聴くほど良くなるけれど、同じエンタテインメントでも、視覚と聴覚ではベクトルが逆。だから僕は初回に身体的な技術の全てを投入してインパクトを残し、2回目以降は、番組から初回と同じものを求められても気にせず、演出に力点を置いて、雰囲気を変えていったんです」。

ダンスは高校卒業後、独学で習得。身体が人より硬く、筋肉もさほどついていないという。とあるテレビ番組で身体能力を測ったところ、至って平凡な結果に。測定不可能なEBIKENパワーの秘密は、一体どこにあるのか!?「トリックですね(笑)。同じ動きができる人は他にもいますが、微妙な身体の向きやタイミング、音楽、シチュエーションなどで、派手さ・不思議さが出る。もっと力のある人が演じれば、より凄く見えるはずです」。

アメリカン・ドリームの体現者に見えるが、本人は「まだ、これから」と表情を引き締める。そんな彼が夢見るのは、日本にカジノシティとシアターディストリクトを作ること。アメリカのシビアなショービズ界に身を置くからこそ、母国の課題や可能性に対する思いは強い。来たる日本公演のテーマは、とにかく観客を楽しませること。多彩な短編集を準備し、スマホのアプリを用いた観客参加の企画も設けるとか。頭脳派パフォーマーの究極の“トリック”に注目だ。

公演は12月27日(土)・28日(日)に東京・六本木ブルーシアターにて。チケット発売中。

取材・文:高橋彩子