米シアトル郊外のウォルマート店舗(2013年)

売上高や従業員数で世界最大の小売業者・米ウォルマートは7月17日(米国時間)、米マイクロソフトと5年間の戦略的パートナーシップ契約を結んだと発表した。「Azure」をはじめとするマイクロソフトのクラウドサービスをウォルマートのIT基盤として全面的に採用するほか、IoTの活用によるコスト削減、最新ツールの導入による働き方改革などにも取り組む。ウォルマートと米アマゾンとの競合が、小売分野に加えてITの領域でも一層明確になった。

ウォルマートは報道発表文で、マイクロソフトがもつクラウドソリューションの全範囲に関して、同社を優先的かつ戦略的なパートナーに選定したと説明。マイクロソフトはAzureだけでなく、Windows・Office・端末管理サービスをセットにしたサービスの「Microsoft 365」や、各種業務ツールに加え、システム開発・運用における技術的な支援も提供する。

ウォルマートは、今回の協業でカギとなるのは「デジタルトランスフォーメーション」「イノベーション」「働き方改革」の3領域としている。

デジタルトランスフォーメーション(事業形態のデジタル化)では、既存の業務システムのクラウド移行を推進し、新技術への対応やコスト管理を容易にしていく。具体的な計画の一例として、ECサイト「Walmart.com」と、同社が別ブランドで運営する会員制スーパー「Sam's Club」のサイトの大部分を、Azure上へ移し替えることが発表されている。

イノベーションでは、顧客が買い物に要する時間と費用を節約できる新技術の導入に取り組むほか、店舗の空調や冷蔵装置、また物流の車両などから得られるデータを集約するIoTプラットフォームをAzure上に構築することで、エネルギー使用量の削減を図っていく。

働き方改革では、従業員のコラボレーションや創造性を高めるため、Office 365上で行われる作業を分析して業務の効率化を図る「Workplace Analytics」や、社内連携用の動画作成・共有ツール「Stream」などの利用が計画されている。

ウォルマートはこれまで、クラウド環境を構築するためのオープンソース技術「OpenStack」を活用し、自社のデータセンターに投資してきたほか、クラウド基盤とその上で実行されるソフトウェアを管理するツール「OneOps」を買収し、ECサイトの運用管理に活用するなど、IT基盤の自社構築に取り組んできた。

その背景には、さまざまな企業がAmazon Web Services(AWS)の採用を拡大する中、ウォルマートとしては小売業での巨大なライバルであるアマゾンのクラウドには依存できないという判断があった。アマゾンが年に一度行う大型セール「プライムデー」の日に、マイクロソフトとの戦略提携を発表したことも、対アマゾンを意識した可能性がある。

今回、マイクロソフトとの提携で自前主義は一部転換するかたちになるが、クラウド市場で世界2位のAzureを採用することで、アマゾンとの競合がより色濃くなった。ウォルマートはすでにいくつかの基幹業務システムでマイクロソフトのサービスを利用しているといい、提携後も一部は自社で構築したクラウド基盤とAzureを併存・連携させる「ハイブリッド」型での運用になるとみられる。

実店舗をもつ小売業と大手IT企業の提携では、北米を中心に高級スーパーを展開するホールフーズ・マーケットを昨年アマゾンが137億ドル(約1兆5000億円)で買収したほか、中国のアリババグループも2016年に新興生鮮スーパーの盒馬鮮生に大型出資し、店舗のIT化を進めている。6月にはロイターが、アマゾンの無人店舗「Amazon Go」に類した無人会計システムをマイクロソフトも開発していると報じており、大手IT企業と小売業者の関係は今後一層緊密になっていくとみられる。(BCN・日高 彰)

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