グループ会社のマウスコンピューターのパソコン・ディスプレイブランド「iiyama」をはじめとしたカスタマイズパソコンを主力商材にビジネスを手がけるパソコン工房金沢南店。ゲームユーザーなどパソコン上級者をお客様の中心に据えて、家電量販店とは一線を画している。加えて、最近では多くの店舗が建ち並ぶ国道8号(金沢バイパス)の近くに出店している利点を生かして、パソコンにあまり詳しくないユーザーを新規顧客として開拓する取り組みも進めている。(取材・文/佐相彰彦)

パソコン工房金沢南店

店舗データ

住所 石川県野々市市御経塚2-300

オープン日 2008年12月(移転日)

売り場面積 約300m2

従業員数 約10人

●ショッピングセンターの近くで 休日に多くの人が集まるエリア

石川県の金沢市と隣接する野々市市。県内で最も交通量の多い金沢バイパスがショッピングエリアになっている。飲食店や自動車販売店、アパレル専門店、ゴルフショップなどが建ち並ぶほか、最も多くのお客様を集めているのがイオン御経塚ショッピングセンターで、休日には多くの人がクルマで訪れて買い物を楽しんでいる。

また、金沢バイパスはヤマダ電機テックランド野々市店、ケーズデンキ金沢本店、アプライド金沢店など、多くの家電量販店が出店している道路でもある。金沢バイパスから少し外れるが、野代に出店しているサンキューの100満ボルト金沢本店は、圧倒的な知名度があり、野々市の住民や金沢市民をはじめ、石川県全域から多くの人が来店する。このように、野々市周辺の金沢バイパスは、家電販売の激戦区としても知られている。そのなかで、家電量販店とは一線を画し、パソコン専門店としてブランド力を高めているのが、イオン御経塚ショッピングセンターから徒歩5分ほどの場所にあるパソコン工房金沢南店だ。

金沢南店が現在の地に移転したのが2008年12月。金沢のパソコン専門店として大型に位置づけられる約300m2の売り場面積で、移転当時からネットゲームを楽しむパソコン上級者を常連客として確保していた。昨年5月には、金沢で1号店に位置づけられる金沢店が金沢南店と統合するかたちで閉店、その店舗の常連客も金沢南店で囲い込むことになった。八田圭司店長代理は、「金沢店がなくなっても、多くのパソコン上級者が常連客として通ってくださる」という。今では、商圏が半径50kmまで広がっており、「加賀市やかほく市に加えて、富山県からもお客様が来てくださるようになった」と自信をみせる。

●アニメや漫画の関連グッズを販売 パソコン初級者が来店する環境を整備

パソコン工房金沢店と統合し、最近では商圏が拡大して多くのパソコン上級者を常連客として獲得しているパソコン工房金沢南店が、次のステップと捉えているのは、パソコン初級者をお客様として獲得することだ。八田店長代理は、「近くにお住まいで、あまりパソコンに詳しくない方に対して、設定や修理などサポートサービスを提供するケースがある。また、近隣のお客様には今年春に『Windows XP』のサポート終了に伴う買い替えを提案して販売につながった。もっと多くの方にサポートを提供したり、買い替えを提案したりしていきたい」との考えで、「まずはパソコンと関係性の薄い商品で来店を促していく」との方針だ。

その一つとして取り扱いを始めたのがアニメや漫画のキャラクター関連グッズだ。最近では、「近くにあるイオン御経塚ショッピングセンターを訪れた学生が、ついでに当店にも寄ってくださるようになった」という。このようなお客様は、「来店して、初めて当店がパソコン専門店だと知ってもらえる」とのことだ。自社ブランドのカスタマイズモデルを販売していることもあって、「来店していただければ、他店とは異なるパソコンがあることに気づいてもらえるだけでなく、メーカー製パソコンよりも低価格であることを理解していただける」。アニメや漫画のキャラクター関連グッズが、パソコンを販売するうえでの呼び水になっているわけだ。

パソコンの買い替えを促す策として、中古品の買い取りにも力を入れて取り組んでいる。パソコンだけでなく、スマートフォンやタブレット端末などスマートデバイスも買い取っていることが、「スマートデバイスユーザーの来店促進につながっている」という。

パソコン工房金沢南店は、パソコン以外の商材で新規のお客様を開拓してパソコンの販売を増やそうとしているわけだが、接客については「あまりパソコンに詳しくないお客様でも、それぞれのモデルで何ができるのかがわかるように、利用シーンを織り交ぜながら説明している」。とくにカスタマイズモデルということでCPUを変更すれば価格が変わってくるので、「お客様がパソコンで何がしたいのかを聞いて最適なモデルを提案している。CPUをアップグレードしたほうがいい理由を、しっかりと伝えることで納得していただいている」という。

商材や接客を工夫したことで、新しいお客様を徐々に獲得しつつあるパソコン工房金沢南店。「パソコンの販売では、どの店舗にも負けない」という意気込みを示している。

●店長代理が語る人気の理由――八田圭司 店長代理

以前はパソコン工房金沢店で現場スタッフとしてパソコンを販売し、5年ほど前に金沢南店へと異動、今は店長不在の際に代理を務める立場だ。「パソコン工房は役職に関係なく、現場でお客様が満足する接客や環境をつくることが基本」。常に店内でお客様とコミュニケーションを密にして、パソコン工房金沢南店が醸し出す雰囲気をつくりあげた。

昨年、金沢店との統合を果たして「金沢店をひいきにしていただいた常連のお客様と再会した。またコミュニケーションがとれるうれしさが込み上げてきた」という。そのお客様は金沢店のときよりも頻繁に来店している。パソコン工房金沢南店の強さは「人」ということだ。

※本記事は、ITビジネス情報紙「週刊BCN」2014年11月17日付 vol.1555より転載したものです。内容は取材時の情報に基づいており、最新の情報とは異なる可能性があります。 >> 週刊BCNとは