2015年1月から“女性版『孤独のグルメ』”とも言われる『ワカコ酒』の実写ドラマが放送スタート、さらに『食戟のソーマ』『幸腹グラフィティ』のアニメ化も発表されるなど、今まさにグルメ漫画がアツい。

そこで今回は11月29日(いい肉の日)にちなんで、漫画に登場した食事シーンから“伝説級のうまそうな肉”をチョイスしてみた。

 

世界一うまそうな焼き鳥――『賭博破戒録カイジ』

ネット掲示板などで「うまそうな漫画の食事シーンは何か?」という話題になった時、ほぼ満場一致でトップに挙げられるのが、人気ギャンブル漫画『カイジ』の第2シリーズ『賭博破戒録カイジ』で描かれたワンシーンだ。とはいえ高級料理などではなく、登場したのはビール、柿ピー、ポテチ、そして焼き鳥である。

第1シリーズラストにおいて裏社会の首領に無謀なギャンブルを挑んで敗れ、借金返済のため地下収容所で強制労働させられることになった主人公・カイジ。人権もプライバシーもない劣悪な環境で、唯一の楽しみが労働報酬(法外に安い)で購入できるビールや焼き鳥などの軽食(法外に高い)だった。一刻でも早く脱出したいカイジは無駄遣いする他の債務者を見て「バカがっ……!」と毒づくのだが、つい誘惑に負けて1本のビールに手を出したのが運の尽き。

「キンキンに冷えてやがる……!」「涙が出るっ……!」「犯罪的だっ……!うますぎるっ……!」「染みこんできやがる……!体にっ……!」などの名言(迷言?)を連発しながらビールを飲み干し、その勢いで焼き鳥やポテチにも散財してしまう。焼き鳥はパック入りの安物をレンジでチンしただけだが、これが最高のご馳走に見えるのだからすばらしい描写力である。

粗末な畳部屋であぐらをかいて、無邪気な笑顔で焼き鳥にかぶりつくカイジを見ていると言葉にしがたい感情がこみ上げてくる。地獄の強制労働を経て初給料日に至り、ガマンにガマンを重ねてから誘惑に負けて豪遊――という巧みな流れの中で描かれたからこそ、ここまでの破壊力が出せたのだろう。深夜に読んだらギャンブル漫画というより、ちょっとした飯テロ漫画である。

ちなみに一連のビール&焼き鳥シーンに費やしたのは週刊連載でたっぷり2話分。作者の福本伸行氏は別作品『最強伝説黒沢』でもアジフライ、なんこつライスを日常エピソードに絡めて描くなど、孤独のグルメならぬ“ダメ人間のグルメ”シーンには並々ならぬこだわりを持っている様子だ。