ヴィジャイ・クリシュナ・アーチャールヤ監督

昨年にインド映画最大のヒット作として上陸し、日本でもヒットした『きっと、うまくいく』の主演スター、アーミル・カーンの最新作『チェイス!』が公開される。全編をシカゴで撮影し、陸・水・空を激走する前代未聞のバイクアクションで魅せる超大作の監督、ヴィジャイ・クリシュナ・アーチャールヤ監督が初来日。取材に答えてくれた。

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インド史上最高の製作費がつぎ込まれ、歴代興収記録も塗り替えた『チェイス!』だが、アーチャールヤ監督にとってはまだ2作目。ただし大作だからといってプレッシャーは感じなかったという。「実はこの映画は毎回主人公が変わる『DHOOM』というシリーズの第三弾。僕は一作目から脚本を手掛けていて、シリーズである以上、新しい挑戦をしないといけないと思っていた。今回はアクション以上にエモーショナルなドラマを描くことが重要だった。監督として強固なビジョンを持っていれば、あとは優れたスタッフやキャストとコラボレーションをすればいいんだよ」

確かに怒涛のカーチェイスや、シルク・ド・ソレイユを思わせる大掛かりなサーカスなどスペクタクルな見せ場は満載。それと同時に胸を締め付けられる切なさが心に残る仕上がりだ。ただ、映画全体に大きなトリックが仕掛けられていて、説明しようとするとすぐにネタバレに抵触してしまう紹介が難しい作品でもある。「監督としては、観客により楽しんでもらうためにネタバレは避けたい。一方でただのアクション映画じゃないことも伝えたい。冒頭の10分を観てもらえば、これが父と息子の話だとわかってもらえると思う。偉大なマジシャンだった父親が、子供の前で命を絶ってしまう。そこから壮大な復讐のドラマが始まるってところまでは喋ってもらって大丈夫だよ」

ひとつのジャンルで括れないほど盛りだくさんなインド映画ならではのサービス精神を継承しつつ、ハリウッドと比べても遜色がないスペクタクルと感動を約束してくれる本作。「物語の先になにが待っているのか、観客のみなさんに発見してもらうためのミステリーです」と結んだ監督が仕掛けたトリックを、どうか劇場で解き明かしていただきたい。

『チェイス!』
12月5日(金)TOHOシネマズみゆき座ほか全国ロードショー

取材・文:村山章