朗読劇『春のめざめ』稽古場より。前列左から、笹本玲奈、高橋正徳、相葉裕樹、中島歩。後列左から、金沢映子、木戸邑弥、横田美紀、栗原類、武田航平、櫻井章喜 朗読劇『春のめざめ』稽古場より。前列左から、笹本玲奈、高橋正徳、相葉裕樹、中島歩。後列左から、金沢映子、木戸邑弥、横田美紀、栗原類、武田航平、櫻井章喜

銀河劇場ニュージェネレーションシリーズの第1弾として、次世代クリエイター×若手舞台俳優による朗読劇が、2週に渡って上演される。1週目に選ばれたのは『春のめざめ』。試行錯誤の熱気あふれる稽古場に入った。

朗読劇『春のめざめ』チケット情報

フランク・ヴェデキント作『春のめざめ』は、100年前にドイツで生まれた戯曲。思春期の少年少女たちの性のめざめと、それを抑圧する大人たちと、だからこそ起こってしまう悲劇とを描いている。若い俳優たちが生かせるものをとこの作品を選んだ演出の高橋正徳(文学座)は、しかし、その戯曲のリライトを鐘下辰男に依頼。現代の日本にも通じる普遍的な本質を抽出した上演台本が仕上がった。

稽古場ではその台本を手に、さらに物語を生きたものにする工夫がなされている。たとえば、舞台美術。舞台には椅子だけが置かれる予定だが、席が決まっているわけではない。9名のキャストに椅子の数はその倍以上の20脚。出演シーンが終われば周囲に並べられた椅子に引っ込む。それもどこに座ってもいい。台詞を読むときでさえ、その位置は不確定で、「明日にはまた変わるかもしれないけど」と、高橋もゆるやかに演出していく。朗読劇と言えば動かずに台本を読んでいるイメージがあるが、想像以上に大らかで躍動的だ。

台本も、ただ読むのではない。相手に向かって語ることもあれば、客席に向かうこともある。相葉裕樹が演じるメルヒオールに、中島歩が演じるモーリッツが自身の性のめざめを告白するやりとりも、そのメリハリをつけることで俄然面白くなった。互いを見ていた視線が客席に向くことで、メルヒオールがモーリッツを未知の世界へ引きずり込もうとする緊迫感もより高まっていく。「言葉を語るということにこだわりながら、何か朗読劇と芝居の真ん中を見つけていきたい」と高橋も語る。

印象的だったのは殴り合うシーン。実際に相手を殴ることなく、足を踏み鳴らし、睨むことで、それを想像させる。「言葉の熱量だけでなく、身体の熱量でも、そのシーンを動かしていきたい」と高橋が言うように、俳優たちはさまざまなアイデアを繰り出して、想像力広がる空間を作り出していくことになる。また、ト書きを含め、ひとりで何役もの台詞を読み、少年少女を演じた俳優が大人も演じる。真面目に一生懸命読む場面もあれば、遊びを取り入れるシーンもある。この朗読劇の自由さこそが、多感な思春期を描くこの作品の豊かさにつながっていくのである。

公演は12月6日(土)・7日(日)に東京・天王洲 銀河劇場にて。