演出:ヴァンサン・ブサール 演出:ヴァンサン・ブサール

2014/2015シーズンの新国立劇場オペラ公演の目玉のひとつが、2015年5月に上演されるヴェルディ作曲《椿姫》の新制作上演だ。

新国立劇場オペラ「椿姫」〈新制作〉の公演情報

19世紀半ばのパリを舞台に、華やかな社交界で男たちを虜にする高級娼婦ヴィオレッタが掴んだ真実の愛と悲運の最期。振幅の激しいドラマチックなストーリーに加えて、有名な〈乾杯の歌〉〈花より花へ〉〈プロヴァンスの海と空〉など次から次に登場する流麗な音楽が、ただ美しいだけでなく、登場人物の心理・感情を巧みに表現しているのがすごい。世界中の歌劇場で頻繁に上演されているのは当然と言えるだろう。新国立劇場でも2002年の初演以来繰り返し上演されてきた人気演目の、待望のニュー・プロダクションが登場する。

演出と美術・衣裳を委ねられたのはフランス人演出家のヴァンサン・ブサール。1999年パリのコメディ・フランセーズで演出家デビュー以来、いまやヨーロッパ中の劇場から引っ張りだこの存在で、これが新国立劇場初登場。彼が《椿姫》を手がけるのも初めてだ。2006年にインスブルックで上演された《ドン・ジョヴァンニ》の映像が商品化されているのでご覧になった方も多いかもしれないが、写実的な装置を排した現代的でシンプルな舞台の中に、ほのかに伝統の香りも感じさせるスタイリッシュな手腕は高い評価を得ている。

主役のヴィオレッタはソプラノ歌手にとって難役だ。第一幕では華やかな高音のアリアがあり、第二幕、第三幕と進むにつれ劇的な性格描写が必要な役柄なので、幅広い、しかも異なるタイプの声の表現が求められる。ほぼ出ずっぱりで休む間もないからなおさらだ。今回ヴィオレッタを演じるのはスロヴェニア人ソプラノのベルナルダ・ボブロ。凛とした透明な美声を持つ彼女の名前を一躍有名にしたのが2012年に英国ロイヤル・オペラで急遽代役で歌った《椿姫》だった。出世役を引っさげての新国立劇場初登場に期待が高まる。

ヴィオレッタの恋人アルフレードを歌うのは、注目のイタリア人若手テノール、アントニオ・ポーリ。スカラ座の2013年来日公演《ファルスタッフ》フェントン役やローマ歌劇場の2014年来日公演《ナブッコ》イズマエーレ役で聴かせた甘くのびやかな歌声も記憶に新しい。

「新しい酒は新しい革袋に盛れ」の故事もある。オペラ界の次代を担う旬の顔ぶれが揃った新制作《椿姫》が魅力的だ。

文:宮本明

◆新国立劇場オペラ「椿姫」〈新制作〉
2015年5月10日(日) 14:00開演
2015年5月13日(水) 14:00開演
2015年5月16日(土) 14:00開演
2015年5月19日(火) 19:00開演
2015年5月23日(土) 14:00開演 (★)ぴあスペシャルデー
2015年5月26日(火) 14:00開演
新国立劇場 オペラパレス
★=ぴあ貸切公演。プレイガイドでのチケット販売はチケットぴあのみ。