(左から)プロデューサーのクリスティーン・ホスステッター・ファイン夫人、トラヴィス・ファイン監督

世界各国の映画祭で観客賞を総なめにした感動作『チョコレートドーナツ』のブルーレイ&DVDがリリース。今年5月、日本での劇場公開に合わせて来日したトラヴィス・ファイン監督が時を置かずして再来日を果たし、改めて本作について語ってくれた。

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周囲に関係を隠して暮らすルディとポール。彼らは育児放棄されたダウン症の少年・マルコを引き取ろうとするが、ゲイのカップルへの養子の認定には様々な壁が立ちはだかり…。

セクシャルマイノリティに社会がいま以上に不寛容だった70年代の終わりに、脚本家の近所で起きた新聞にも載らない“事件”を基に執筆された脚本を、30年以上を経て映画化した。「最初の脚本ではルディはいなかったのですが、ポールとマルコの関係に強く惹かれました。“普通”と見なされない彼らが惹かれ合い、家族になっていく部分を描きたかったんです」。

とはいえ、ゲイのカップルとダウン症の少年を描く映画は「投資家を募るが決して簡単ではなかった」。それでも、監督は「自分たちが大切だと思うストーリーを伝える」という信念を曲げずに映画を作り、結果、映画は称賛をもって迎えられた。

「涙だけでなく笑いも込めたつもりです。“chopping onions(=刻んだ玉ねぎ)”という『お涙ちょうだい』を意味する言葉がありますが、そこを目指したわけではありません。ラストは衝撃的かもしれませんが、それが狙いでもありません。多くの観客はラブストーリーとして――真実の愛を見つけること、血の繋がりではなく心の繋がりで家族が出来るということを感じ、この作品に惹かれたのだと思います」。ちなみに、結末に関しては当初180度正反対のものだったが、現実の社会、正義の在り方などを鑑みてこのエンディングを選んだという。

監督自身、セクシャルマイノリティや弱者に対する社会の在り方が、ここ10年ほどで大きく変わってきていることは実感している。「例えばエレン・デジェネレス(アカデミー賞授賞式の司会も務めた女優・コメディエンヌ)のような著名な人物がカミングアウトするなど、確実に社会は変わっていると思います」とうなずく。

一方で映画作りに関しては「インディーズ映画にとって冬の時代」と顔をしかめるが、本作が世界中の観客に受け入れられたという事実はひとつの希望の光と言えるはずだ。

『チョコレートドーナツ』
公開中

『チョコレートドーナツ』
ブルーレイ&DVD 発売中
ブルーレイ(1枚組):4700円(税別)
DVD(1枚組):3800円(税別)

取材・文・写真:黒豆直樹