アラバキ・ロックフェスやホテルCLASKAなど、場所や規模をさまざまに変えながら上演を重ねてきた『物語の生まれる場所』。作家、脚本家、映画監督など多彩な肩書きをもつ大宮エリーが作と演出を担当し、気心の知れた仲間たちと「音楽とことばの即興で一回きりの一夜かぎりのものがたり」(公演チラシより)を繰り広げるステージだ。そんな本作が、いよいよ客席数700余の中劇場・天王洲 銀河劇場に登場する。今度はどんな夜になるのか、大宮に聞いた。
出演は大宮自身(朗読)と本作でこれまでもコンビを組んできたおおはた雄一(ギター・歌)に加え、芳垣安洋(ドラム)、伊賀航(ベース)、栗コーダーカルテット3/4(リコーダーなど)が決定。大宮は「一度は劇場でやりたくなった…というものの、相変わらず地味なメンツでお送りします」と笑うが、有名アーティストや映画作品に楽曲提供してきたおおはたと芳垣、細野晴臣や星野源のサポートベーシストとしても知られる伊賀、NHK教育テレビの「ピタゴラスイッチ」のBGMほか各方面にひっぱりたこの栗コーダーカルテット3/4と、それぞれの経歴を見れば音楽性の確かさは一目瞭然だ。
気になる内容はというと、「朗読と楽曲のネタは用意しているんですが、当日幕が開いてお客さんの顔を見てから決める部分も多いです」と大宮。「せっかくのライブという場だし“刺すか刺されるか”ぐらいの緊張感をもってやりたい。ホテルCLASKAでの時も、おおはたくんが急に『北の果て』という言葉を放ってくるから、こっちもパッと『北の果てからやってきた女がいた。その女が向かったのは、ホテルCLASKA…』なんて真顔で応えて、おおはたくんが即興で演奏を始めるなんてこともありました。お客さんは大笑いしてましたけど、本当にどこに転がるか分からないので大変」と、それでも楽しげな表情で大宮は話す。
もちろんファンが毎回心待ちにしている定番のネタや、今回のために書きおろした新作の朗読もあり。“耳で聴くプラネタリウム”や恋愛にまつわる小品などでは、泣いている観客の様子がステージから見えるそうだ。大宮は「そんな方を見ていると、こちらも泣いてしまうんですよね。私自身が悩んだ時に書いた作品も多いから、きっと“(苦しいのは)私だけじゃなかった”って共感していただけたのかなって」と語る。笑いと涙と、その両方が丸ごと“大宮エリー”の世界。最後に少し考えた後、「例えるならコロッケカレーみたいな舞台かも。カレーはインドでコロッケは日本だけど、カレーで染みたコロッケが意外に美味しかった、というような」と自らその味わいの一端を伝えてくれた。
公演は12月13日(土)、東京・天王洲 銀河劇場にて。
取材・文 佐藤さくら
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