PFFについて語った山下敦弘監督

9月の東京開催に続き、京都、名古屋、神戸、福岡での開催を控える「第36回ぴあフィルムフェスティバル」(PFF)。東京では特別企画「映画監督への道~私を駆りたてるもの~」と題し、公開中の『超能力研究部の3人』や来年公開の『味園ユニバース』など話題作を発表し続ける山下敦弘監督のトークセッションが行なわれた。地方開催を前に改めて山下監督に、この特別企画のテーマに沿ってPFF、そして映画作りについて話を聞いた。

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大阪芸術大学在学中から映画を制作してきた山下監督。PFFとの関わりについて「先輩の熊切(和嘉/映画監督)さんが、『鬼畜大宴会』でPFF準グランプリを獲ったこともあり、自分も出そうと思ったんですが、ちょうど自分の卒制の『どんてん生活』が大阪の作品の特集上映の形でPFFで上映されて、コンペには出せなかったんですよ」と語る。ゆえに自作を出品することはなかったが「僕は大阪で作っていたけど、PFFは全国から来た人たちが一堂に会して“同期”のような感覚で刺激し合っていて、そういう交流の場がうらやましい気持ちもありましたね」と明かす。「やはり認められたいという気持ちはあった。賞を獲れば次にも繋がるし自信にもなる。負けることも多いけど、それがバネにもなった。そこでの競い合いってすごく重要でしたし、自分の作品が海外の人の目に触れるというのはすごく感動的でした」。

既にメジャー作品の監督として十二分に認知される存在になった。「まだ自分の中では“プロ”とか“映画監督”という立場に関して揺れ動いてる……」と苦笑しつつ、映画作りの“原動力”についてはこんな話も。「初期の衝動、自分の中から出てくる『やりたいこと』というのはすごく大事ですが、でもそれは最初の1~2本ですよ。そこから先、何ができるか? いまの自分は企画をいただいたり、原作にヒントをもらって作る場合も多いけど、例えば『このキャストなら魅力的な作品ができそう』とか『こうすれば面白い』という、他人の企画が“譲れない”自分の作品になる瞬間がある。その感覚が大事だなと思います」。

さらに原動力を突き詰めれば「『他人と違うことがしたい』とか『モテたい』とかだった(笑)」。それでも「作ってる最中は夢中で、全力を注いだら、その分だけ返ってくるリアクションや感動があった」と言葉に力を込める。「それは映画祭であれ、大学であれ周りの人間がいたから。若い人たちにとっては機材などの点で映画作りが以前より手軽になったと思いますが、だからこそ『映画は一人では作れない』という言葉の意味を強く感じます」。

取材・文・撮影:黒豆直樹

第36回PFFぴあフィルムフェスティバル
12月13日(土)から19日(金)まで 京都シネマ
12月18日(木)から21日(日)まで 愛知県芸術文化センター
12月20日(土)から23日(火・祝日)まで 神戸アートビレッジセンター
2015年1月3日(土)から9日(金)まで 京都シネマ で開催