いろんな愛のカタチがあってイイ!史上最強の恋愛小説集!

『きみはポラリス』(三浦しをん/新潮文庫)

続いてご紹介したい小説は、11の恋愛短編が収録されている三浦しをんさん作の『きみはポラリス』という小説です。

本書はどのお話も、主婦や学生など、一見どこにでもいそうな人たちが主役なのですが、そのほとんどの人が、心に重い秘密を抱えて生きていました。
亡くなった人の骨片を持ち、思い出だけを胸に一生を生き抜くことを決めた女性。
幼い頃、親切な誘拐犯と見た夜空の思い出を、ずっと大切に持ち続けている女性。
同性愛に片思い、禁断の愛……。

このお話に出てくるほとんどの「愛」は、結婚に繋げたりなど、社会的にどうこうできる関係ではありません。ですが、描かれているすべての恋愛は、間違いなく、最強で特別でした。
誰かを想う時に放たれる、北極星(ポラリス)のような、ほのかな、でも決して揺らがない光――。その光に照らされて、支えられて、守られるように生きている彼女たちが、とてもまぶしかったです。

「心の中で、何を想い支えにして生きていくかは自由。たとえ誰にも認めてもらえなくても、この光に照らされていれば、私は絶対大丈夫。いろいろな愛し方、生き方があって、すべての恋愛は普通じゃない。」

そんな声が、本から聞こえてくるようです。100人いれば100通りの恋愛の形があり、いろいろな愛し方、生き方があるのだということを、この小説から教えられました。

さまざまな恋愛模様が描かれているので、共感できるところは皆さんにも多くあるかと思います。私の恋愛も、あなたの恋愛も、絶対に悪くなんかない! と、心にポッと明かりが灯るような、勇気が持てるお話です。

 

バカップル万歳!まるでうさぎのようなラブラブすぎるカップルが可愛すぎる!

『ラビット病』(山田詠美/新潮文庫)

「ゆーりちゃん、ローバちゃん、私たちはうさぎー♪」。

さて、3冊目はうってかわって、こんなかわいらしい歌を恥ずかしげもなく歌ってしまう(!)、目も当てられないほどラブラブすぎるカップルが登場する、山田詠美さんの『ラビット病』という小説をご紹介したいと思います。あのフワフワで、寂しがりやである「うさぎ」のように、終始イチャイチャしているカップルの様子が楽しめます(笑)。

主人公は、親の残した遺産でマイペースに暮らし続けているけれど、家族の温もりを知らない、強烈なワガママ娘の「ゆりちゃん」と、黒人米兵士で、涙腺のゆるい純情青年の「ロバート」。ゆりちゃんとロバートは一緒に暮らしているのですが、ゆりちゃんはお金持ちなので、特に働きもせず、ボロボロの服を着て、一日中飲んだくれたり、シンクの三角コーナーにうじ虫をわかせたり、ロバートの耳をかじって甘えたりしながら、気ままに暮らしています。ちなみに、家事はほとんどロバートがやっています。う、うらやましい……!

客観的に見ると、ゆりちゃんは「嫌な女」に見えないこともないのですが、彼女が本能的に欲しいものを貪欲に求め、まるで動物のように彼を愛しているのを見ると、最高に可愛くて、イイ女に見えてくるから不思議です!

ゆりちゃんとロバートは、お互いのことを心から受け止めあい、全てを見せ合い、成長しようとするカップルでした。ゆりちゃんはロバートに家族の温もりを教わり、ロバートはゆりちゃんから、決断力やたくましさを教わっていました。だから、読んでいて嫉妬心がわくこともなく、そのバカップルぶりがまばゆく目に映ります(笑)。

クリスマス前のこの季節に読むと、私もこんなふうに絶対に幸せになってやる!周りの目なんてなーんにも、気にする必要なんてない、ガンガンいってやる~~~!!!と、ちょっと変な、でも力強いパワーがみなぎってくるかもしれません!あと一歩、誰かに背中を押してもらいたい恋をしている方はぜひ読んでみてくださいね。