明日良いことが起きるのは、もしかしたらあなたの番かもしれない!

『アイネクライネナハトムジーク』(伊坂幸太郎/幻冬舎)

さて、最後にご紹介したいのは、決して派手ではないけれど、日常の中の思わずクスッと笑ってしまうような、小さな楽しみがたくさん描かれている、伊坂幸太郎さん作の『アイネクライネナハトムジーク』という小説です。伊坂さんのお話には珍しく、本書は強盗も超能力者も、殺し屋も奇妙な設定も出てきません。

このお話は短編6作が収録されているのですが、登場するのは、奥さんに愛想をつかされたサラリーマンや、他力本願で恋をしようとする青年、そして元いじめっこに復讐をする思いもよらないチャンスに恵まれ、悩むOL……など、ごく普通の人々ばかりです。悩んでいる人々に、1回100円で、斉藤なにがし、というミュージシャンの曲のワンフレーズをかけて励ます仕事をしている謎の人物も登場します!(笑)。

また、この6つの短編が少しずつ繋がりを持って行き、時系列が前後して、「まさかあの人とこの人が出会うなんて……!?」と、驚くようなサプライズが本文にたくさんしかけられているのも、読んでいてとてもワクワクします! 例えば、ボクシングのヘビー級の世界チャンピオンと、急にちょっとした接点ができて、人生が変わる女性や、なるほど! とうなってしまうような、人助けに関する“ウソ”で、ピンチを切り抜ける少女たちの話は、思わずにんまり笑ってしまいました。

読んでいて「そうそう、私たちの人生って、こんなふうに小さくて、優しい奇跡は、本当にたくさん起きているよね」と、うなずいてしまう瞬間が描かれています。

初恋の甘酸っぱさのような、それでいてちょっと切なくなってしまうような、ユーモアたっぷりの出会いと別れのお話が心に響き、「明日からもまた頑張ろう~!」と感じられる、元気になれるお話です。とても読みやすいので、小説が苦手な方にもおススメです。

一見普通なのだけれど、面白い個性的なカップルにたくさん笑わせてもらいました。
ぜひ、気軽な気持ちで読んでみてくださいね!


いかがでしたか?この冬、皆さんがチェックしてみたい恋愛小説はありましたでしょうか?私は昔、「リア充な人々がイチャイチャする、幸せそうな恋物語なんて、特にクリスマス前には惨めな気持ちになるから、絶対に読みたくない!」と、恋愛小説を敬遠していたのですが、色々な恋愛小説をよんでいくうちに「あ、それは違うな」と気がつきました。

何も両思いだけが幸せなわけでもないし、100人いたら100通りの恋の仕方があることを小説から教えてもらいました。好きなら突っ込んで行くのもありだし、心の中で誰かを大事に思い続けるのもまた良し、です。

気になった本がありましたら、良かったらぜひ、読んでみてくださいね。

 京都府在住の26歳。三度の飯より本が好きで、またそのレビューを書くことを何よりも愛している。毒のある本やミステリーが好き。主に「読書」の分野で記事を書いています。いつでもアワアワしているフリーランスのライターです。 Blog