【漫画】「あの人は今…」鬼才漫画家の新作をチェック!

長年にわたって第一線で活躍する漫画家たち。彼らこそ時代に流されない真の“鬼才”であると言えよう。そこで今回は大ヒット作を持つ3人の作家と、その最新作をご紹介。

漫画の世界は実力主義だ。全国ネットでアニメ化された人気漫画家の次回作がいきなり10週打ち切りを食らったり、次回作でセルフパロディをやって自爆したり……「傑作を生み出した漫画家がその後も一流であり続けられるか?」は保証がない。だがしかし、そんなの知ったことか! と言わんばかりに最前線で良作を生み続ける正真正銘の“鬼才”がいる。今回はそんな漫画家を3名ピックアップし、意外に知られていない(かもしれない)最新作情報をお伝えしたい。
 

■『ヘルシング』の平野耕太が描く『ドリフターズ』 

戦国末期の猛将・島津豊久は戦場で命を散らす寸前、不思議な力によってエルフたちのいる異世界へ飛ばされる。そこで出会ったのは織田信長、那須与一といった時代を超えた英雄。「漂流物(ドリフターズ)」と呼ばれた豊久たちはその並外れた戦闘力を買われ、「廃棄物(エンズ)」と呼ばれる謎の敵勢力から異世界を解放するため死闘を繰り広げることになる。

歴史上の偉人たちがもし一堂に会し、それぞれの流儀で激突したらどうなるか? 人気ゲーム『Fate』シリーズでも題材にされている壮大な“IFストーリー”の平野バージョンといったところだ。

ほぼ豊久視点で話が進むため彼が実質上の主人公といえるが、出てくるキャラクター(大半は実在の英雄)も個性豊か。味方側の信長たちだけでなく、強大な武力で異世界の秩序を乱す敵側には怪僧ラスプーチン、悲劇の英雄ジャンヌ=ダルク、新撰組の土方歳三まで時代&国家を超えてなんでもありだ。彼らが刀で、弓矢で、魔法で、挙げ句は戦闘機やら軍艦まで持ち出してファンタジー世界で暴れ回る……なんとも血湧き肉躍る展開ではないか。

むろん昔から変わらない平野節は健在。印象的なセリフまわし、圧倒的な殺陣シーンの見せ方、史実をもとに誇張された各英雄のキャラ付けなど作者独自のエンタテインメント性は他に類を見ない。ちなみに現在、2年連続でマンガ大賞の大賞候補作にノミネート中。今年こそ受賞が期待される。単行本は2巻が最新だ。
『ドリフターズ 1』 少年画報社  590円  
 


■『寄生獣』の岩明均が描く『ヒストリエ』 

舞台は紀元前4世紀。アレクサンダー大王に書記官として仕えたエウメネスを主人公として、その激動の半生を語る意欲作。エウメネスは実在の人物だが若い頃に何をしていたかという史料が乏しく(いまだ生年も不明)、その空白を岩明テイストで鮮やかに描き出している。

作中、青年期のエウメネスは外見こそまんま『寄生獣』の新一くんなのだが、中身はまったく別物。幼いころから書に親しみ、神童と呼んでいいほどの才能にあふれた設定がされている。しかし恵まれた才能と反するように、彼の少年期からの人生は超ハードモードだ。目の前で家族を惨殺され、なかばその記憶を封印したまま拾われた家でお金持ち生活、その後は奴隷の身分へ転落→運搬される途中で船が難破して見知らぬ部族に助けられ……以下略。

そんな人生の荒波を知識と機転、時に武勇で切り抜けていくエウメネスの姿は、まるで神話の英雄。一方で彼自身の弱いところや戸惑う心情までしっかり描写されているので、読者は意外とすんなり感情移入することができる。フィクションの主役を「天才」設定にするのは実のところ作家にとって至難の業なのだが、それを完璧にこなしてしまう岩明氏はやはり並みの力量じゃない。骨太の本格ドラマを求める人にはイチオシしたい。

ちなみに掲載誌は『寄生獣』と同じ、久々の『月刊アフタヌーン』。それ相応にグロ描写も多いが旧作ファンなら問題ないだろう。作者はこの作品により文化庁メディア芸術祭マンガ部門を受賞している。単行本は7巻まで発売中。
『ヒストリエ 1』講談社 560円

 

■『トライガン』の内藤泰弘が描く『血界戦線』

一夜にしてニューヨークが消滅し、代わりに出現したのは異界(ビヨンド)に通じる街。異界のバケモノと人間が同居するその都市は「ヘルサレムズ・ロット」と名づけられた。本作はそんなカオス都市で、世界の秩序を守るため活動する秘密結社「ライブラ」の奇人変人たちによるバケモノ退治を描いたストーリーである。

 

単行本カバーに書かれた通り、まさに「世界は何でも起こる」というキャッチフレーズをそのまんま漫画にしたような愉快痛快娯楽活劇が誕生した。舞台となる街は本当の意味で何でもアリ。昼間から薬物取引とか銃撃戦などもはや当たり前。放っておいたら世界を破滅させかねない神とか悪魔とか、そんなレベルの連中が頻繁にちょっかいをかけてくるのだ。

で、当然それを迎え撃つ人類側、ライブラ所属の皆さんも半端じゃない。前作『トライガン』にたとえると“GUNG-HO-GUNSのメンバーがもし人類の味方だったら?”という感じのキワモノ博物館状態。万物を見通す義眼を装着したレオくん(実質的な主人公)はまだ常識人として、リーダーのクラウスは紳士な性格の野獣、極度に短気なブレード使いのザップ、不可視の人狼・チェイン。その多くは「○○流血闘術」といった具合に自らの血液を武器化する戦闘スタイルをもっており、近代兵器が通用しないバケモノとガチでやり合う。

アクションシーンは内藤作品だけに、とにかくド派手。街ごと踏みつぶしそうなモンスタートラックを生身の人間がブン殴って宙に舞わせるとか、具体的にはそんなシーンの連続。さらに作品のノリがアッパー系なためか軽いジョークやツッコミの応酬も見どころだ。過去の『トライガン』はヴァッシュとナイヴズの確執、不殺(ころさず)の戦闘スタイルなど制約が多めだったが、それらから解き放たれたこちらは作者本人がとにかく楽しんで、下手すると誰よりも読者よりも楽しんで描いてるんじゃないか、というのが伝わってくる。

もちろん読者から見ても一流のエンタメ作品なのは言うまでもない。堅苦しいテーマなどは考えず、連休中にピザでも食いながらゲラゲラ笑って読むには最適の逸品である。単行本は現在4巻まで発売。
『血界戦線 1 魔界街結社』 集英社 460円



以上、努力だけではどうにもならない“才能の壁”を突破してしまった鬼才たちの最新作をお伝えした。たとえ過去の名声を知らない人間が読んでも思わずうなってしまうような、いずれ劣らぬ良作ばかりだ(共通の弱点は連載ペースの不安定さだなぁ…)。

「学生時代に好きだったあの作者、今こんなの描いてるんだ~」と興味を持たれた方はぜひお手にとっていただきたい。 

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