ファーウェイ・テクノロジーズ コンシューマービジネスグループでCOOを務めるWan Biao氏

「当社のスマートフォンに搭載するチップは、CPU、GPU以外にAI専用プロセッサのNPU(ニューラル・プロセッシング・ユニット)が入っている。このようなAI処理の能力は、今後間違いなくPCにも応用されることになる」 2016年、「HUAWEI MateBook」を発売し、PC市場に参入したファーウェイ・テクノロジーズ。スマートフォンの販売台数で世界3位の地位についた同社は、PC市場においても事業拡大を図っているが、7月に来日した同社コンシューマービジネスグループCOOのWan Biao氏は、PCの発展性について冒頭のように述べ、スマートフォン同様PCに関しても、何らかの形でAI処理性能を高める機能を搭載する考えを示した。

スマートフォン市場では当初、普及価格帯の製品で市場シェアを獲得し、その後、高級機にもラインアップを拡大していったファーウェイだが、PC事業への参入にあたっては「これまでと違った戦略をとってきた」(Wan氏)。その理由は、普及価格帯の製品を投入することで一定のシェアは確保できると考えられるものの、「それが消費者に大きな価値をもたらすかというと、そうではない。私たち自身にとってみても、大きな価値はない」(同)からだという。

スマートフォンがこの10年間で急速な進化を遂げてきたのに対し、PCという製品カテゴリでは大きな革新が起こっていない。そのような市場において、新規参入メーカーがこれまでと代わり映えしない製品を発売しても、影響力や存在感を示すことができないという判断のようだ。「社内でPC事業の戦略を立てるにあたって、プレミアム製品にフォーカスし、最もすぐれたPCをつくっていこうと決めた。これまでスマートフォンで培ってきた革新的な技術を、PCに投入していこうと考えた」(Wan氏)としている。

この考え方が最も顕著に表現されているのが、「HUAWEI MateBook X」シリーズだ。薄型軽量な筐体に3辺狭額縁のディスプレイを搭載し、高精細、広色域の映像表現を可能にしたほか、指紋認証機能を内蔵した電源ボタンの搭載など、他社とは一線を画した製品に仕上げた。最新の「HUAWEI MateBook X Pro」では、キーボードにウェブカメラを内蔵した独自構造の採用など、機能とデザインの両面で商品の価値を高めることに腐心した。

また、同社はXシリーズ以外にも複数の製品ラインアップを展開している。PC市場では、ハイエンド、ミッドレンジなど、いくつかの価格帯で多くのメーカーがそれぞれしのぎを削っているが、ファーウェイは各価格帯ごとに「プレミアム」な製品を投入していく戦略をとると説明。同社にとってプレミアムとは単に高価格なことではなく、他社と競合する各カテゴリのなかで、最もすぐれた製品を提供していく考え方を示しているという。

そのプレミアム戦略の鍵になるのが、先に述べたAI処理機能だ。Wan氏は、AI処理機能をどのようにPCに実装するか、具体的な言及は避けたが、そのヒントとして、この分野における二つの強みを示した。

「他のPCメーカーは、インテル製のチップセットとWindows OSに大きく依存せざるを得ない状態で、研究開発においても規模が限られている。しかし、当社はさまざまなスマートデバイスを手がけてきて、努力を怠らず研究開発を行ってきた。PC製品にも技術を応用できると考えている」(Wan氏)。とはいえ、チップセットからOSまで独自のアーキテクチャをもつPCを一から作り上げるのは、現在の市場環境からして現実的ではないだろう。

もう一つの強みとしてWan氏は、「当社では独自のクラウド基盤を構築しており、IaaS(インフラ)、PaaS(プラットフォーム)、SaaS(アプリケーションソフト)の3レイヤーを全部網羅している。異なる複数のOSにまたがったサービスを提供できる」と言及。さらに、将来的にはPCにも5G通信機能を内蔵することを視野に入れているという。

膨大なデータの学習や、PCに入力された情報をAIで分析・判定するといった処理は、ネットワークを介してクラウド側で行われ、その結果がPC上のアプリケーションソフトに反映する。5Gでどこでも高速・低遅延の通信ができる時代になれば、クラウドと通信機能の組み合わせによって「AI搭載PC」を実現可能だ。ファーウェイにとってのチャレンジは、AIに強いPCをつくり上げることよりも、その能力を生かした利用シーンとして何が提案できるかどうかにかかってくる。

また、Wan氏は「既存の製品ラインアップに関しては、12か月から18か月ごとにバージョンアップしていく」と述べ、早ければ1年のサイクルで新製品のモデルチェンジを図っていく方針を示した。最新機種「HUAWEI MateBook X Pro」の発売は今年6月であることから、来年夏か遅くとも来年中には、革新性の高い製品が提供されるもようだ。

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