“和製ガジェット”の最古参!?『たばこ入れ』の美しすぎる世界に迫る【貴重写真多数】

2014.12.26 16:15

江戸から明治、大正にかけて人々に使用された「たばこ入れ」。単なる道具の域を超えて、芸術的な魅力を兼ね備えた「和製ガジェット」の最古参とも言える「たばこ入れ」の魅力とは? 貴重な写真とともに、たばこと塩の博物館の主任学芸員・谷田有史さんに伺いました。

シガレットケースやライターなど、たばこにまつわる周辺グッズは趣味性の高いものが多い。これは現代だけではなく、江戸時代も一緒。きせるやたばこ入れといった喫煙具は、機能性とデザイン性を兼ね備えた実用品であり美術工芸品でした。いわば、現代でいうところの「ガジェット」のようなものです。

そこで今回は、“和製ガジェット”の最古参とも言える「たばこ入れ」の歴史や進化、デザインの魅力を、「たばこと塩の博物館」の主任学芸員 谷田有史さんに伺いました。たばこ入れを通して、日本の喫煙の歴史についても知ることができますよ。
 

「たばこ入れ」が生まれた背景

――そもそも喫煙はいつ頃から日本で始まったのですか?

「元々たばこはアメリカ大陸原産の植物です。コロンブスが1492年に新大陸に到達してから、トマトやジャガイモなどとともにヨーロッパに渡りました。そして日本には、南蛮人(なんばんじん)と呼ばれたポルトガル人やスペイン人が渡って来た際に持ち込まれたものと言われており、江戸時代の初期には喫煙の流行が始まりました」

――当時は刻みたばこをきせるで吸うスタイルですね。

「そうです。当初は屋内で吸うのが一般的で、刻みたばこを入れる“たばこ入れ”、今日のマッチやライターの役目をする“火入れ”、きせるの灰を落とす“灰落し”と呼ばれた道具が3点セットとして、たばこ盆に乗せて置いてありました。

その後、屋外でも吸いたいという流れができてきて、巾着に刻みたばこを入れたものをきせるに結びつけたり、別個に持ち歩いたりするようになったのです。ただし、当時の江戸市中は歩きたばこは禁止でしたので、基本的には茶店などで吸うスタイルでしたけれど」

――刻みたばこをきせるで吸うスタイルはいつ頃まであったのでしょうか。

 

「ききょう」 拡大画像表示

「紙巻たばこや葉巻は、横浜が開港された幕末以降に入ってきたと言われています。1930年前後、大正時代の終わり頃に紙巻たばこが刻みたばこの製造数を超えるようになりました。

昭和に入っても刻みたばこを吸う人はいました。昭和30~40年代頃までは明治・大正生まれの方を中心に、きせるでたばこを吸う習慣はまだまだ残っていました。しかし、昭和54年に“ききょう”という刻みたばこの製造が中止になったことで、紙巻きたばこ全盛の時代になったと言えます。現在は“小粋(こいき)”という銘柄の刻みたばこが製造されています」
 

「たばこ入れ」の多様な種類

――巾着から始まって、専用のたばこ入れが登場したというわけですね。たばこ入れにはいくつか種類があるのですか?

「時代的な流行もありますが、基本的なものは刻みたばこを入れるためだけの、一つ提げたばこ入れです。“根付”という、着物の帯に止める道具が付いています。次がきせるを入れておくきせる筒が付いた、提げたばこ入れです。また、きせる筒を帯の前に差しておく、腰差したばこ入れというタイプもあります」

 

「鬼しぼ革胴乱形一つ提げたばこ入れ」 拡大画像表示
 
「黒棧留革提げたばこ入れ」 拡大画像表示

「このほか、名刺入れのようにぱたんとふたつ折りになるシンプルな懐中たばこ入れと呼ばれるタイプのものや、杓子形(しゃくしがた)のものがあります。変わったものでは、片方には手ぬぐいを納め、もう片方に刻みたばこを入れた袋を納める袂落し(たもとおとし)と呼ばれるタイプのものもあります。これは両方が紐でつながっていて、腰のところに回して、それぞれを袂に入れていました。大きく分けると、以上のような6つのタイプがあります」

 

「印伝革縁取り提げたばこ入れ」 拡大画像表示

――素材としてはどのようなものがあるのでしょうか。

「一番多いのは革、そして布ですね。素朴なものとしては木製のもの、簡易なものとして紙製のものもありました」

――資料を拝見するとデザイン的にすごく凝っているものが多いと思うのですが、江戸時代や明治時代ではどのような人たちが持っていたのでしょうか。

「主に富裕層の町人ですね。武士は刀にお金をかけて、町人はたばこ入れや紙入れ(財布)にお金をかけた。今なら、ライターや腕時計にお金をかける感覚でしょう。現在でも腕時計の収集を趣味としている人は、何個も集めていますよね。それと同じように季節ごと、場面ごとにたばこ入れを揃えていたという感じです。例えば、夏場には布地でできた涼しげなデザインのものを、冬場は羅紗(らしゃ)製のものというように使い分けていたようです」

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