『ゴーン・ガール』(C)2014 Twentieth Century Fox

公開中の映画『ゴーン・ガール』の音楽をトレント・レズナーとアッティカス・ロスが手がけている。製作に際し、デイヴィッド・フィンチャー監督はふたりに“安心させてくれるような音楽”をリクエストしたという。妻の失踪からはじまるサスペンスフルな物語にふたりはどのような音楽を提供したのだろうか?

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本作は、結婚5年目を迎え、誰もが幸福だと思っていた妻エイミーが突然、姿を消したことから、事件の容疑者として人々の注目を集めながら妻の捜索を続ける夫ニックの姿と、夫婦の間の秘密を描いた作品だ。

トレント・レズナーはナイン・インチ・ネイルズを率いるアメリカの人気ミュージシャン。アッティカス・ロスは英国出身の音楽プロデューサーでレズナーとは何度もタッグを組んでおり、共にハウ・トゥ・デストロイ・エンジェルスとしても活動。フィンチャー監督の『ソーシャル・ネットワーク』『ドラゴン・タトゥーの女』の音楽もレズナー&ロスが手がけている。

本作はミステリー的な展開を主軸にしながら、そこにうごめく人々の欲望や絶妙な駆け引き、秘めた想いが渦巻く緊張感あふれる作品だ。しかしフィンチャー監督はふたりに「ふたりの考えるスパの音楽を作ってほしい。マッサージを受けながら耳にするような音楽だ。すべてうまく行くと安心させてくれるような音楽にしてほしい」とリクエストしたという。その理由は「この映画は“うわべ”を描いている。良き隣人、良き夫、良き妻の見かけのことを描いている」からだ。レズナーは「中西部の状況や巨大な邸宅が差し押さえられ、ダウンタウンがゴーストタウン化してしまったアメリカン・ドリームの現状について話し合った。そして、これは彼らが“こうありたい”と願う姿を世界中に示した人々の物語だというアイディアが浮かんできた。そこから、どんな音を集めるのか、どんな楽器を使うのか、そこからどんな色や輪郭が生まれるのかを話し合った」という。

『ゴーン・ガール』の音楽の多くは、やわらかい電子音や穏やかなピアノの旋律で構成されている。しかし、ふたりは随所に“ちいさな違和感”を感じさせるようなパルス音やフレーズを挟み込んでいく。時には曲が予想外の方向へと展開し、緊張感が高まるが、再び穏やかなフレーズが訪れる。幸福な夫婦だと思われていたニックとエイミーの“うわべ”と“真実”が音楽で見事に表現されており、映画の密度をさらに高めている。

ちなみにフィンチャー監督はふたりに“安心できる音楽”をリクエストしたが、こうもコメントしている。「トレントとアッティカスの音楽が人を安心させてくれるとは思えないね」。穏やかなのに緊迫感のある音楽。『ゴーン・ガール』を観賞する際はふたりの手がけた音にも注目してほしい。

『ゴーン・ガール』
公開中