半世紀以上にわたり、ソニーのブランディング拠点であったソニービルの跡地に「Ginza Sony Park」が開園した。その名の通り、コンセプトは「公園」。あらゆるカルチャーを発信する場でもあったソニービルの機能を継承した空間は、銀座で歩き疲れた観光客やビジネスマンの憩いの場になりそうだ。

特徴はなんといっても、地上1階~地下4階の“垂直立体公園”という珍しい構造だ。聞きなれない名称だが、実際に現地を訪問すると、その指し示すところが理解できる。地上はもちろん、地下フロアも大部分はくつろいだり、イベントを開催したりできるフリースペース。野外の公園の概念が室内の地下まで拡張した施設になっているのだ。

記者が訪問した日はあいにくの雨。高層ビル群の中にある緑の新鮮さや頭上に開けた青空を味わうことはできなかったが、それでもさまざまな仕掛けに驚かされた。まず、地上に配置されたさまざまな植物。そのそばには、よく目にする品種や特徴などが記された札があるのだが、よく見ると価格のようなものも表記してある。実はこの公園に植えられている植物は「アヲ GINZA TOKYO」の商品で実際に購入することが可能。購入されると空いたスペースには、新たな植物が配置され、公園の景色は日々アップデートされていく。

植物に囲まれたスペースの中心付近にはシルバーのトレイラーが止まっているが、これはTOKYO FMのサテライトスタジオ。ラジオ番組を収録するほか、音楽配信サービスspotifyとコラボレーションした企画も実施するという。

トレイラーの正面にある大きな階段を下りていくと、いよいよ地下フロア。地下1階に入居しているのは、飲茶をテイクアウトできる「MIMOSA GINZA」とコンビニをコンセプトにしたセレクトショップ「THE CONVENI」の2店舗。小規模ではあるが、ここでしか手に入らないアイテムを扱うなど、プレミアム価値の高い体験を提供する。

目を引いたのは、フロアをよちよちと歩いているソニーの犬型ロボットaiboだ。このaiboには「スパーク」という名前がつけられており、このフロアに常駐しているとのこと。記者がなでると、嬉しそうに反応を示してくれた。何度もコミュニケーションをとると顔を認識してくれるそうなので、スパーク君を目的に通ってしまう人も多そうだ。

地下2階はイベントスペースになっており、8月9日~9月24日までの期間はローラースケート場を設置。音楽と映像による演出の中でローラースケートを楽しむことができる。シューズのレンタルなども行っているが、料金は無料。ふらっと立ち寄って体験することが可能だ。期間中にはプロのインストラクターによるレッスンやスペシャルパフォーマンスも実施する。

地下3階には「トラヤカフェ・あんスタンド」が出店。ここでは、限定アイテムとしてオリジナルの「あんペースト」を販売する。

あんスタンドの反対側はテーブルとイスのあるフリースペースになっており、各テーブルにはソニーモバイルの「Xperia Touch」が備えられている。ここで楽しめるのは、4種類のミニゲーム。タッチ操作でパックを打ち合う対戦型のエアホッケーや一人でも遊べるインベーダーゲームなどがあり、テイクアウトしたお酒や食事の肴になりそうだ。

地下4階には代官山・横浜・京都でクラフトビール専門店「SPRING VALLEY BREWERY」の新コンセプト店舗「“BEER TO GO”by SPRING VALLEY BREWERY」が出店。16種類のクラフトビールや12種類のデリやグリルを提供する。同店として初のテイクアウト専門店となるが、ビールを注ぐプラスチックのコップに一工夫。味だけでなく香りも満喫できるように、飲み口を鼻が入るくらいに広くとった。試してみると、フタで密閉されているからか、想像以上に凝縮した香りが楽しめた。

同フロアは普段はフリースペースになっているが、金曜日の夜にはライブ会場に様変わりする。音楽との偶然の出会いを演出するため、出演アーティストは当日発表とのことだ。

各フロアにそれぞれの顔をもった「Ginza Sony Park」だが、共通しているのは、街にオープンに開けているということだ。地上は銀座というビルの密集地であるにもかかわらず、三方が塞がれていない好立地。地下2階は東京メトロのコンコースと境なく接しており、通行人が気軽に足を向けることができるようになっている。

ソニーのブランディングのさりげなさも魅力的。aiboやXperia Touchなど、趣味性が高いガジェットを無料で試せるのはファンでなくともうれしい。「Ginza Sony Park」は変わり続けることもテーマの一つ。季節や時代を反映して公園がどのように変化を遂げていくのかも楽しみだ。(BCN・大蔵 大輔)