純名里沙 純名里沙

歌手・女優の純名里沙が、ブラジリアン・スタイルの奏法で知られるギタリスト笹子重治のプロデュースでこの春リリースしたアルバム『う・た・が・た・り』。純名が「古語辞典から選んだ」というタイトルが表すとおり、柔らかい歌声で 物語の情景を浮かび上がらせる曲の数々は、リラックスしたい大人にぴったりの心地よさだ。8月に東京・名古屋・大阪でのコンサートツアーを控えた純名に、本アルバムに込めた想いを聞いた。

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日本語詩にこだわって収録した全12曲。そのうち7曲は、菅原洋一の歌でヒットした『奥さまお手をどうぞ』や、永六輔作詞・中村八大作曲の名曲『黄昏のビギン』など、昭和のスタンダードナンバーが並ぶ。笹子のギターは単なる伴奏にとどまらず、純名の歌声と時に寄り添い、時に対峙するように響くのが印象的だ。「笹子さんとのデュオ活動を始めて6年目になりますが、最初の1、2年は笹子さんのギターと一緒に“生きている音”を紡ぐのが本当に難しくて……。ようやく最近、それが自然に出来るようになった気がします」と純名はその成果を実感しているようだ。

残る5曲は、純名が作詞を担当したオリジナル曲。中でも、叙情的なスタンダードナンバーに対して、少しクセのある世界観がほしいと、シンガーソングライターのNUUに相談して出来たという『かわいくてごめんね』が存在感を放つ。ポップな曲調で、突き抜けたワガママさを発揮するのだがどこか憎めない女性像を、純名は生き生きと歌っている。「まずモデルは私じゃないってことはお知らせしておきますね(笑)」と純名は茶目っけたっぷりに断ったうえで、「歌の上でも色んな女性を演じてみたくなって依頼しました。揺れ動いている女性と思ってくださってもいいですし、自由に想像して楽しんでいただければ。それが歌の面白いところですよね」と改めて語った。

その他、オフィスで働く女性をイメージした『ヒールを脱いで』、大人のための子守唄という『子どものように』など、どれも短編映画のような味わいの曲ばかり。「“歌は3分のドラマ”って言いますけど、ライブでも曲に入り込んで歌うのでヘトヘトになっちゃいます(笑)」と純名。真摯に、まっすぐに音楽に向き合う姿勢は昔から変わらない。「2011年の東日本大震災の後、個人的にも心が落ち込む時期が重なって」(純名)、ここ数年は歌に焦点を絞った活動を続けてきた。

「誰にでも傷ついた経験ってありますよね。私も音楽で癒されたからこそ、これからも心に寄り添う音楽を届けていきたい」と純名は話す。最後に、気になる女優活動について聞くと、「音楽をコツコツと続けてきたことで、自分の中でようやく勇気を持てるようになりました。もちろんお芝居も、出来ることがあればぜひ挑戦したいです」と、笑顔で答えてくれた。

公演は8月29日(水)東京・TOKYO FMホールにて、チケット発売中。

取材・文:佐藤さくら