料理のコーディネート … 勝者♀『ワカコ酒』

複数の料理を頼むさい、どれだけ味のバランス・調和、食べるシチュエーションにも気を配れるか。これは『ワカコ酒』の圧勝である。

呑んべえであるワカコは20代と思えないほど“酒とサカナ”の組み合わせに関して経験値が豊富だ。キンメ鯛の煮付けには冷やの日本酒、粉物や揚げ物系にはビール、筑前煮には芋焼酎の水割り、ポテトサラダにはウーロンハイ……互いの旨さを引き立てる彼女のチョイスにハズレはなく、いつも幸せな食事を堪能している。

対する『孤独のグルメ』の五郎は、まったくアルコールが飲めないという設定。この時点で酒とサカナのコーディネートは評価外となる。また、店での注文も後先を考えない“その場の勢い任せ”だ。なので豚汁と豚の炒めものがダブってしまったり、食べきれないほどの量をコンビニで買い込んで後悔したりする。

また、骨折で入院した時は「バナナを食べてから牛乳を飲み、口の中でバナナジュースを作ってみる」という試みをした(新装版コミックスに収録)こともあるが、センスが独創的すぎて読者は苦笑するほかなかった。味覚は意外に鋭かったりするものの、万人受けするコーディネートの面ではワカコに軍配が上がるだろう。

 

飯テロ度 … 引き分け

食事シーンを見ている読者(視聴者)がどれだけ「その料理を自分にも食べさせて!」と熱望するか――いわゆる“飯テロ”の度合いは『ワカコ酒』『孤独のグルメ』とも同点の引き分けとしたい。

単純に「うまそう!」と思わせるだけなら前項の通り、鉄板のオーダーを心得たワカコの勝利だろう。しかし五郎の食事シーンも(失敗はあるが)侮れない。その大きな理由は旺盛な食欲を活かした“数うちゃ当たる”注文法。ドンブリを完食しつつ一品料理も頼んだり、これでもかと焼き肉を腹に詰め込んだり、定食を平らげた直後にカレーライスも注文したり……たくさんの料理を大の男がモリモリ食べまくる姿はそれ自体が爽快で、つい見ている私たちも食欲を刺激されてしまうのだ。

がっつり食べたい日のランチやディナーなら『孤独のグルメ』が、仕事帰りや寝る前に軽く小腹を満たしたい時は『ワカコ酒』が、それぞれ読者にとって強力な“飯テロ”作品として襲いかかってくるだろう。