劇団Patch第5回本公演『観音クレイジーショー』より 劇団Patch第5回本公演『観音クレイジーショー』より

「おもしろかったー! で、どういうこと!?」。そんなハチャメチャな感想を抱かせる、山崎彬(悪い芝居)作・演出の劇団Patch第5回本公演『観音クレイジーショー』が、クリスマスイブに開幕、12月30日までの全12回公演が大盛況のうちに幕を閉じた。8か月連続で毎月新たな作家と組む人気“武者修行”企画「Patch8番勝負」の集大成とあって、メンバーの個性と成長がスパークした見ごたえある作品となった。

劇団Patch 公演情報

主人公は恋愛をこじらせた26歳のバイト男子、大爆音(おおばく・おと)。彼の愛を巡る物語が友人らとの交流を通して描かれる、のだが。悶々とした現世に見切りをつけるよう今や「解脱」の道を模索し始めた音には、いつしか“人ならざるもの”が見え始めていた。守護霊かはたまた肥大した自意識の化身か。“やつら”は常に音の周囲をうごめき、その一挙手一投足を注視する。やがて「観られること」に耐えかねた音がとった行動により、観客は予想だにしない世界へと引きずり込まれることになる……。と設定だけ聞けばホラーだが、実際の“やつら”と言えばワンダーランドから抜け出たようなカラフルさ。必要とあれば扉、棚、便器などの小道具にもなり替わり、自らセットチェンジも行う。具体的な美術に頼らず、限られた人とアイテムで多彩なシーンを想起させる。小劇場ならではの演出が楽しい。また大筋とは別にカラオケ、コンビニ、実家まで。場所を変えて描かれる音の日常は、“シチュエーションあるある”の連続で。デフォルメされたキャラクターもツッコミどころ満載。さらに場面転換ではメロウにもハードにも変化するバンドの生演奏が加わり、その都度、照明が効果的に明滅する……。とにかく、あれもこれもと早口でまくし立てたくなるほどの濃密さ。瞬きの度に景色を変える、万華鏡のような舞台なのだ。

主人公を演じる中山義紘は、持ち前の思慮深い眼差しからモラトリアムな役柄がよく似合う。悶々とした前半とは打って変わり、後半は振り切った演技で惹きつけた。終盤、本音を吐露する音の姿は、恥ずかしいくらいに純粋な愛の告白にも思えたが、あなたの目にはどう映っただろう。答えは観た人の数だけ存在する。そんな演劇の醍醐味に触れられた、忘れがたい時間となった。

公演初日には早くも次回本公演『SPECTER』の上演が告知された。作・演出の末満健一がライフワークに掲げる人気ヴァンパイア・シリーズ「TRUMP」の最新作とあって、今まで以上に期待と注目度が高まることは間違いない。2015年も声援を糧に躍進するPatchの活躍を、ぜひその目で見届けてほしい。次回公演「Patch stage vol.6『SPECTER』」は3月18日(水)から22日(日)まで大阪・ABCホールにて。チケットぴあでは公演チケットのインターネット先行抽選を1月7日(水)午前11時より受付。

取材・文/石橋法子