荒牧伸志監督

士郎正宗氏の代表作を映画化するシリーズ最新作『アップルシード アルファ』で、メガホンをとった荒牧伸志監督が取材に応じた。2004年に当時最新のモーションキャプチャーを導入し、“フル3Dライブアニメ”という分野を開拓したシリーズ第1弾『アップルシード』から10年。飛躍的な映像技術の進歩にあって、一番変わったのは「スタッフの意識」だと語る。

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映画は非核大戦が終結し、廃墟となったニューヨークを舞台に、主人公の女性兵士デュナンとサイボーグのブリアレイオスが、人類の理想郷として築かれた都市オリュンポスに至るまでの“始まりの物語”を描いた。

「さまざまな切り口がある原作ですが、一番の根幹にあるものはやっぱりデュナンとブリアレイオスという“ふたり”の物語。廃墟の中で生き抜く彼らを想像することで、この作品のビジョンが一気に広がりましたし、絶望的な世界の質感をできるだけリアルに表現すれば、希望を失ったふたりの心情も描けると思いました」(荒牧監督)。

大ヒットした監督作『キャプテンハーロック』を経て、実写のようなリアルさを追求する“フォトリアルルック”はさらなる進化を遂げた。「CPUの速度やメモリーの容量など、ハードの進歩はもちろんですが、この10年で培ったスキルをもとに、知恵と努力でどこまで表現しきれるか? ハリウッドに対抗できる映像を生み出したいという強い思いが芽生え、スタッフたちが文字通りプラス“アルファ”を目指してくれた」と誇らしげだ。

ただし、本作はあくまで通過点。『アップルシード アルファ』を完成させた今は、技術とストーリーの両面でさらなる可能性に瞳を輝かせる。「すでに映画を観た多くの方が、ふたりの行く末がどうなるか興味を示してくれている。僕自身もそうなんですよ。それに技術面でもキャラクターの表情や感情表現など、単純に『実写みたい』という評価で終わらない何かがないと…。もっとやれること、やるべきことが山のようにありますね」(荒牧監督)。

『アップルシード アルファ』
1月17日(土) 新宿バルト9ほか全国ロードショー
Blu-ray劇場限定版1月17日(土)発売
Blu-ray完全生産限定版2月18日(水)発売
発売元:アニプレックス

取材・文・写真:内田 涼