今年は夏の暑さがとても厳しいので、例年に比べて屋外でスポーツを楽しむ時間が減っているという方も多いのではないだろうか。これから迎える秋のスポーツシーズンは穏やかな気候に恵まれることを期待しながら、スポーツと音楽を一緒に心地よく楽しめる「完全ワイヤレスイヤホン」を用意してみてはいかがだろうか。 アップルの「AirPods」で注目を集める左右独立型の完全ワイヤレスイヤホンはスポーツシーンにも実に相性の良いアイテムだが、本体に防滴・防汗加工を施しているものであれば、汗をたくさんかいても、あるいは屋外で急な夕立に見舞われても気兼ねなく使い続けることができる。また音づくりや便利な機能についても、スポーツシーンに最適化されたイヤホンを選ぶことでトレーニングの効率アップも狙える。今回はいま人気・実力ともに注目度の高いスポーツ対応の完全ワイヤレスイヤホン4機種を選んでみた。参考になれば幸いだ。

ソニー「WF-SP700N」

IPX4相当の防滴性能を持ちながらデジタルノイズキャンセリング機能を搭載した業界初の完全ワイヤレスイヤホン。ノイキャン付きのイヤホンと聞くと、何だか危ないように思えるかもしれないが、内蔵マイクで外の音を集音しながら音楽とミックスした状態で聞ける「外音取り込みモード」も搭載されている。一人でヨガや体操に集中したいときと、屋外でジョギングを楽しみたいときの両方に活躍してくれる。

独特なそら豆のような形をしたイヤホンを斜めに乗せるような装着スタイル。シリコン製のイヤーチップとフィン形状のアークサポーターを組み合わせると、イヤホン本体が耳元にしっかりと固定される。歩いたり走ったりしても、あるいは激しくダンスしても微動だにしない高いフィット感が得られる。

ピンクやイエローなど彩り鮮やかな4色が揃う。ケースも特徴的で、フタを回転させると中に左右のイヤホンがコンパクトに収まる。耳のくぼみにスタビライザーを装着して固定するスポーツイヤホンは現在のトレンド。店頭などで装着感を試してから購入を検討することをおすすめしたい。

重低音再生で人気の「Extra Bass」シリーズの音づくりを継承。スポーツしながらでも体の芯まで響くような力強くタイトな低音再生を特徴としている。ダンスミュージックやロックと好相性。専用アプリ「Sony Headphones Connect」に搭載するイコライザー機能を使えばフラットなバランスに変更が可能。外音取り込みとイコライザーの設定値をメモリーしておき、本体のボタンからいつでも呼び出せる「クイックサウンドセッティング」も使いこなしたい。

ボーズ「Bose SoundSport Free wireless headphones」

ボーズ初の完全ワイヤレスイヤホンは名前からわかる通りの“スポーツ押し”。ボーズは有線タイプのイヤホンにもスポーツシーンでの使用に最適な銘機を数多く発売してきたブランド。本機もスポーツイヤホンの本場であるアメリカで生まれたイヤホンらしい、インパクトのあるサウンド、安定した装着感、イヤホン単体でも約5時間の連続再生に対応するバッテリー性能など先進性にあふれている。

本体と充電器を兼ねたケースはやや大きめだが、イヤホンは独自のスタビライザーとイヤーチップを一体化した「StayHear+ Sportチップ」によって抜群の安定感を実現している。耳に装着してしまえばフィット感はとても軽く、安定している。本体は雨や汗濡れに強いIPX4。

ルックスからは重低音系のイヤホンに見えるかもしれないが、実は今回揃えた4機種の中では最もバランス志向。屋内で聴くと少し強めに感じられる低音も、スポーツシーンや屋外でのリスニング時には最適化なバランスに整って、とてもエネルギッシュなサウンドが楽しめる。解像度が高く、音場に広がりも感じられる。ジャズやクラシックの再生もそつなくこなすオールラウンダー。完全ワイヤレスイヤホンの泣き所と言われている、左右イヤホン間での音途切れやノイズの発生も4つのイヤホンの中では最も少なかった。独自アプリの「BOSE CONNECT」は接続設定のほか、「Find My Buds」機能は万が一イヤホンをなくしたときにあると役に立つ。

Jabra「Jabra Elite Active 65t」

デンマークのJabraは、スポーツ用完全ワイヤレスイヤホンの先駆け的なブランド。本機はブランド発の完全ワイヤレスイヤホンとしては早くも第3世代のモデルになる。専用アプリにライトなアクティビティトラッキングの機能を乗せたり、アマゾンの「Alexa」対応などAIやセンサーを活かした先進機能を満載したところにも個性が光る。心拍センサーを乗せて、より本気のスポーツシーンに活用できる兄弟機の「Elite Sport 4.5」も発売中。

今回揃えた他の3機種のようなスタビライザーを使わずに、特殊コーティングの技術を活かすことで耳に装着した時に抜群の安定感を実現する。汗や雨、ホコリにも強いIP56認証を取得。「Jabra Sound+」アプリからユーザー登録を行うと、汗と粉塵による故障に対する2年保証サービスが受けられるようになるのも頼もしいところ。

音づくりは派手さを抑えながら、ディティールにフォーカスした自然なバランスを特徴としている。スポーツシーンに限らず、ふだんの街歩きや旅行の時にも本機で長時間音楽を聴いても疲れにくく、リラックスできるだろう。アプリには音を好みに合わせてカスタマイズする時に便利なイコライザー機能や、外の音が聞こえるようになる「ヒアスルー機能」も搭載する。アプリの設定値を変更するときに、多少イヤホンにノイズが乗ることもあった。内蔵マイクの反応が良いので、Alexaを音声でスムーズに操作できた。

ロジクール「Jaybird RUN」

Jaybirdはアメリカを代表するスポーツイヤホンのスペシャリスト。RUNはそのJaybirdから発売された初めての完全ワイヤレスイヤホンだ。本体に二重の疎水性ナノコーティングをかけたことで、汗から分泌される酸や泥汚れにも強いイヤホンとしている。

イヤホン本体とケースのサイズがとてもコンパクトなところや、アクセサリーのように煌びやかなパーツを配置したデザインも女性向き。面倒なペアリングもJaybirdアプリがサポートしてくれる。アプリに搭載されている「イヤホンの検索」機能も、万が一見当たらなくなったときにあると心強い。

音質は今回テストした4機種の中で最も明るく煌びやか。メリハリのある元気の良いサウンドが、スポーツで疲れた体にエネルギーをチャージしてくれる。Jaybirdアプリのイコライザーを使えば音質を好みのバランスにカスタマイズができるし、同じRUNを使うユーザーが自作したイコライザーの設定値をダウンロード、シェアして楽しむことも可能。ラッシュアワーの駅前や電車の中などで時折左右イヤホン間の接続が途切れることもあったが、ふだん使いでは気にならないレベルだと思う。

今回はそれぞれに個性的な4モデルをピックアップしてみた。デザインや音質についてはぜひショップに並んでいるデモ機などに実際に触れてみながら好みを確かめてみてほしいと思う。

完全ワイヤレスイヤホンは国内では昨年頃から本格的にブレイクしたばかりだが、AIやセンサーの最新技術を採り入れながら急速に進化を続けている、いま最も活きのいいポータブルオーディオ機器だ。今回はピックアップしていないが、サムスンの「Gear Icon X」、ブラギの「The Dash Pro」のように本体に音楽プレーヤー機能を内蔵する、スポーツシーンに最適な完全ワイヤレスイヤホンもこれから続々と現れるかもしれない。その最新動向にはこれからも要注目だ。(オーディオビジュアルライター・山本 敦)