並べてみると絵の完成度に浮き沈みもあるそうで、
「試合の勝敗にだいたい連動してくるんですよね。負けがこんでくればがんばろうとも思うし、ある選手が活躍したらその人をしっかり描こうと思うから、自分の調子が少しあがってくるとか。そういうのも、しっかり見てもらえば楽しめる展覧会になっているので、よろしくお願いします!」と、個展をアピールした。

「楽天戦、この辺がダメなときの絵ですね」 写真:©ぴあ/小林裕和

最低限しか働かず、ひたすら描く

絵をどうやって描くのか?野球以外に絵を描くことは?といったことはもちろん、プロ野球入りを目指すというその生き様故に、記者たちから質問攻めに合ったながさわ氏。「どうやって生計を立ててるんですか?」という率直な質問も飛び出した。

今は学校の臨時講師の仕事がメインで、「生計はほとんど立っていないです。描く時間が少なくなるので、なるべく仕事を入れないんです。最低限しか働いていないです」という。

実際、シーズン中は野球以外のテレビは見ないそうで、この日は朝の情報番組のテレビカメラも入っていたが、「だいたい絵を描き始めてる時間の番組ですね……テレビは野球以外は観てないです、シーズン中は観られないです。とにかく、そこにすべて集約させていったときに自分が何が出来るか?っていうのをやってみたいんですよね」と、ありのままに語り、「でも、番組観ます。コレで覚えたから(笑)」とユーモアを交えて場を沸かせた。

プロ野球入りについては「あまり言わないようにしようと思ってるんですけど(笑)」という前置きをしながらも、その意思は変わっていないことを発表した。

「プロ入りはしたいですけど、お金目的っていうわけではなくて。こういう奴も迎え入れるような場になれば、プロ野球ってもっと盛り上がるんじゃないかなという思いもあるんですよ」と真意を伝えると、「迎え入れてくれるチームがあれば、メジャーでもいいんですか?」という質問が飛び出した。

それに対してながさわ氏は、「そういう声がかかれば。要は、こういう活動している奴を受け入れるようなところがあるかどうか?っていうは、美術家としてのポイントになってきているので」と真剣な表情で応えていた。

シーズンを終えると、毎試合描くための練習をしながらどんな画風にするのかを模索するという。楽天を描き始めた当時の版画から年々スタイルは変化し、現在のような1試合1枚をペンと色鉛筆で構成する用になるまで数年かかってきた。

「今年は、年またぎのときに、ここにある絵を描いてました。ライダーもののソフトビニールの人形なんですけど、これで色の勉強してましたね。今、いろんなものを描いてます」と、個展会場の絵を紹介していたが、この期間がながさわ氏の「自主トレ」だ。
絵を描くための基礎作りをしながら、これまでの作品を展覧会で披露し総括し、絵を見てくれた人たちの感想や言葉をもらって次のシーズンへの施策を練る。特に作品への感想や応援、叱咤激励が反映されていくのも彼独自のスタンスだ。