舞台「おおきく振りかぶって 夏の大会編」稽古場より 撮影:イシイノブミ 舞台「おおきく振りかぶって 夏の大会編」稽古場より 撮影:イシイノブミ

9月6日(木)より東京・池袋 サンシャイン劇場で本番を迎える『おおきく振りかぶって 夏の大会編』、舞台初日を3週間後に控えた稽古場を取材した。

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今作は、2月に上演した『おおきく振りかぶって』の第二弾。甲子園を目指す高校野球部を舞台にした原作マンガは、これまでのスポ根ものとは違い、気弱で卑屈な少年ピッチャーを主人公にし大ヒットしている。脚本・演出は前作に続き演劇集団キャラメルボックスの成井豊。長年、小説原作の舞台化に力を入れてきた成井が得意とする、演劇的な感動あふれる舞台になりそうだ。

この日は前半の山場の稽古。野球の試合シーンでは、同時に20人以上が登場する。実際の試合を早回しにしたように、次々と選手がバッターボックスに立ち攻守交代していく。舞台に人が入り乱れめまぐるしいが、そんな中でもそれぞれの人物にドラマがある。誰が誰を意識しているのか、誰の台詞を観客に届けるかなど、整理していく。

成井は気になる俳優をひとりひとり呼び「今、君の役の盛り上がりが作れていないのがわかる?」「ここは君の役にとってはこんな意味があるシーンだよね。調節できるかな?」と穏やかに問いかける。中でも前半の鍵となる役を演じる白又敦や大村わたるは、真剣に頷く。俳優それぞれに自分の役の全体像を理解させ、組み立てさせていく。同時に、ほかの俳優も自主的に円陣を組み「あのシーンはこうしてみないか?」と相談する。

主人公・三橋役の西銘駿は、気弱で自信がないがみんなが目を離せないエースを演じている。震えながらも高くまっすぐな声が、芯の強さを感じさせる。前回よりも役が馴染み、より体温のある三橋となるのではと期待させる。バディでもある阿部役は今回ふたり。この日の稽古では大橋典之が演じ、精悍な顔立ちと直情的な表現が西銘と良いバランスだ。Wキャストの猪野広樹との違いも楽しみ。ほか、初参加の一色洋平は抜群の運動神経で、チーム一の実力者という説得力を持たせる。また各自、短いシーンでそれぞれのキャラクターを見せる。

野球部を支える役どころとして、成井の演出を知るキャラメルボックスの劇団員らが出演。監督役の渡邊安理は今シリーズ初参戦ながら、強い声と安定した立ち姿でチームの土台となる。多田直人は場の空気に合ったアドリブを連発し、その自然さに周囲の俳優たちの笑いがこぼれ、目が輝く。

成井らしい青春の音楽に彩られ、まもなく、青い夏の幕が開く。

東京公演は9月17日(月・祝)まで。その後、28日(金)・29日(土)・30日(日)には大阪・梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ で上演。

取材・文:河野桃子