『東京プレイボーイクラブ』を手がけた奥田庸介監督

大森南朋、光石研らが主演する映画『東京プレイボーイクラブ』が4日(土)から公開される。本作を手がけたのは本作が商業映画デビューとなる奥田庸介監督。自主映画時代から国内はもちろん海外でもその手腕が高く評価されている新鋭だ。そこで奥田監督に話を聞き、映画のこと、そして現在の日本映画界について語ってもらった。

その他の写真

『東京プレイボーイクラブ』の主人公は、地元で起こした暴力沙汰が原因で東京にやってきた流れ者の勝利。彼は昔の仲間の成吉が経営する場末のサロンに身を寄せるが、ある事件を機に次々とトラブルに巻き込まれ、物語は多くの人々の思惑や運命を燃料に予想外の方向へと走りだしていく。

奥田監督は新人監督とは思えぬ巧みな手つきで、絡み合う伏線と個性豊かなキャラクターをまとめあげているが、重要なのはいつも“人間”だという。「最近の若い監督は体裁ばかり繕って、小気味いいカラクリだったり、ストーリーテリングだったり“小手先の映画”ばっかりじゃないですか。でも映画は人間、ハート、愛じゃないですか! だから、今作ではエンターテインメント的なことや疾走感を意識しましたけど、結局、映画ってのは“人間”を描くもの。そこはブレてません」。

確かに本作は暴力的なシーンも登場するし、登場人物たちの行動が複雑に交錯する物語だ。しかし、観賞後には疾走感だけでなく、人間の哀しみや切なさが残る。「俺自身が弱虫な人間でいっつもウジウジしているから、勝利や成吉に憧れるんだと思うんです。ふたりは『この瞬間がすべてだ』と思って生きてるし、見てくれはちょっと暴力的で汚いけど、それが一番美しいんだと思うんです」。

どんな状況であっても必死に生きて、もがき、叫び声をあげる人間たちの姿を描いた『東京プレイボーイクラブ』は、日本公開を前に海外の観客からも高い評価を得ている。ロッテルダム映画祭ではタイガーアワードに正式出品され、釜山映画祭ではアジアの窓部門で作品が正式上映された。「映画をつくるときにはシンプルに、万国共通に通じる人間の感情にしぼって描きますね。過去に海外の映画祭に行ったのが大きかったですね。向こうのお客さんはシンプル。つまらなければ席を立つし。良ければ純粋に作品を評価してくれる。もちろん『世界と勝負したい』って気持ちはあります」。

24歳で商業映画デビューを飾り、日本だけでなく海外もその視野に入れている奥田監督。「つねに1本の企画にすべてを出し切るので灰になるまで出しきった」という『東京プレイボーイクラブ』が、その“大いなる一歩”になることを期待したい。

『東京プレイボーイクラブ』
2月4日(土) 渋谷ユーロスペース、シネマート新宿ほか全国ロードショー