大勢の来場者で賑わうソニーのブース

世界最大のコンシューマエレクトロニクスの祭典「2015 International CES」に出展したソニー。今年も来場者に鮮烈な印象を残すプロダクトとテクノロジーを紹介した。これからのオーディオ・ビジュアルのトレンドをけん引するであろう重要なトピックスがソニーのブースに集まった。

期間中に開催した記者向けのラウンドテーブルで、ソニーの平井一夫社長は「私がソニーの社長に就任して以来、お客様の好奇心を刺激して感動をもたらすものづくりの大切さについて繰り返し述べてきた。ソニーのビジネスは、いま展開のスピードを上げて、意欲的な製品づくりに社員が積極果敢に取り組む環境が整った。その成果の一端をお見せするべく、CESに向けて準備してきた製品が一堂に揃った」と今年のCESの出展内容を語った。

確かに今回CESに合わせてソニーが発表した製品は、既存の商品カテゴリを正統進化させただけのものからは、感じ取ることのできないワクワク感が伝わってくるものばかりだった。その製品を手に入れて活用することで、生活がどのように変わり、豊かさを感じることができるのか、明確なイメージが頭の中に浮かんでくる。おそらくソニーのエンジニアに「ソニーらしいおもしろい製品をつくってみせる」という強い意志があったことがうかがえる。なかでも注目の集まった製品と技術のいくつかをピックアップしよう。

●液晶テレビは高画質と薄型化をアピール

液晶テレビ「ブラビア」のコーナーでは、テレビの本質的な価値である高画質を次のステージに押し上げる4K戦略として、独自開発の4Kプロセッサ「X1」を展示した。映像の4K化の波は、北米の家庭のリビングにも押し寄せている。

このほか、パネルの厚みを約4.9mmにした超薄型設計や、グーグルのテレビ向けプラットフォーム「Android TV」を搭載するスマートテレビとしての利便性も追求した4Kのネクストステップを提案。来場者の好奇心を刺激した。

北米で販売を予定している「ブラビア」の3シリーズ・11機種のうち、磁性流体スピーカーを搭載するオールインワンモデル2シリーズは、初のハイレゾ対応テレビでもある。4Kの高精細な映像には相応の“いい音”が必要であるという、明確なメッセージを打ち出した。

●オーディオ機器のハイレゾ化をけん引

国内では、ハイレゾオーディオの普及をけん引するメーカーになっているソニー。米国では、アップルのiPodの台頭によって携帯オーディオ「ウォークマン」が活気を失っていた時期もあったが、今年は「ウォークマン」のフラッグシップモデル「NW-ZX2」を発表し、米国でもハイレゾをコミュニケーションワードに掲げながら「オーディオのソニー」の復権に本腰を入れる。

2014年秋に日本で発売したハイレゾ対応「ウォークマン」のエントリモデル「Aシリーズ」は、同時期に欧米でも発売した人気モデルだ。プレミアムモデルの「NW-ZX2」を追加することで、ラインアップを増やすだけでなく、ソニーのブランドイメージを積極的に向上させていこうとする狙いがある。

「NW-ZX2」が搭載する技術のなかで特に注目したいのが、「LDAC」だ。Bluetoothをベースに、ソニーが独自に開発した新しいコーデック技術で、ハイレゾに迫る高品位なサウンドをワイヤレスで飛ばして楽しむことができる。96kHz/24bitのハイレゾ音源をそのまま符号化して、Bluetoothの規格上限である1Mbpsに近い最大ビットレート990kbpsの伝送速度で飛ばすことができるのだ。

非可逆圧縮なので音質が低下するところが純粋なハイレゾ再生と違うところだが、ビット深度と周波数は維持したまま、フォーマット上は96kHz/24bitを保っている。いい音への気づきを、より広い音楽ファンに提供する技術の新機軸として、ソニーのオーディオ製品開発陣が期待を寄せる技術だ。

●今年もアツイ! ウェアラブル端末

スマートフォンやタブレット端末など、モバイルデバイスは今年のCESで国内ユーザーに直接関わる大きなトピックスがなかった。そもそも北米地域では、「Xperia」シリーズの存在感があまり大きくはないので、展示スペースの割りあても低くなりがち。それでも、昨年末に米国の大手キャリア、ベライゾン向けに提供した「Xperia Z3v」の展示スペースを充実させ、ハイレゾ再生と高いカメラ性能を積極的にアピールした。

ウェアラブル端末は、北米でいま最も活況を呈している製品カテゴリの一つだ。CESのメイン会場であるLVCC(ラスベガス・コンベンション・センター)のほかにも、隣接するSans Expo会場にはウェアラブル系の製品やサービスを手がける大手企業やスタートアップ系企業がひしめき合い、大いに賑わった。

ソニーは、メガネに装着して使う「SmartEyeglass Attach!」を出品。体験コーナーにできた列は、短くなることがなかった。また、一見するとBluetoothイヤホンのように見える「Smart B-Trainer」は、左右のイヤホン本体に音楽プレーヤー機能とメモリ、さらに心拍計やGPSを内蔵している。いい音で音楽を聴きながらスポーツが楽しめ、専用アプリとの組み合わせることで健康管理をサポートしてくれる一体型のスマートデバイスだ。

このほか、ビデオカメラの「4Kハンディカム」はより小型化を追求。人気の「アクションカム」も、4K撮影に対応した。さらにソニーが高い技術力をもつCMOSセンサは、カメラ系の商品だけでなく、クルマに複数のセンサを組み込んでドライブサポートのアプリケーションに応用するプランを提示していた。

IT・モバイルが進化するスピードに同期しながら、エレクトロニクスを取り巻く環境が目まぐるしく変わり続けるなか、コンシューマ目線から魅力的な商品を愚直に追求してきたソニーらしさが多くの来場者に伝わった2015年のCESの展示だったといえるのではないだろうか。(オーディオビジュアルライター 山本 敦)