『マシンガン・プリーチャー』でサム・チルダースを演じたジェラルド・バトラー

紛争に揺れるアフリカ、スーダンの孤児たちを救おうとした米国人サム・チルダースの行動を、実話に基づいて描いた『マシンガン・プリーチャー』が2月4日(土)より日本公開される。信じがたい事実を映画化するうえで何が大切だったのか。監督のマーク・フォースターに話を聞いた。

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武装勢力LRAによって400万人が殺され、4万人の児童が誘拐されているといわれるスーダン。本作で描かれるその惨状は、やはり痛ましいものである。地雷に吹き飛ばされる子供、銃を持たせられ強制的に殺しを強いられる孤児、容赦ない女性への暴力。これらはすべて事実に即しているとフォースターは語る。「サムと一緒にスーダンへ行き、彼の施設や軍に急襲された難民キャンプなど映画で描かれることになる場所に連れて行ってもらった。現地の人にも大勢会ったよ。映画の前半で登場する唇を切られた女性や、家族を殺された村人たちにも話を聞いた」。これらの体験が、フォースターの映画作りへの意志を強くさせたという。

もうひとつ、彼の興味を強く引いたのがサム・チルダースという人物。血の気の多い前科者が信仰に目覚め、アフリカの子供たちの救世主になる。こんな人間が本当にいるとは、すぐには信じ難い。「自分も最初は信じられなかったし、まず会ってみようと思った。本人に初めて会ったときに驚いたのは、とても物静かな人だったことだ。その後、彼の自宅を訪ねたり、一緒にスーダンに行ったりしているうちに、いろいろな面を持っている人であることがわかった。ワイルドでアグレッシブであり、一方で驚かざるをえないほど命がけで活動にあたっている。本当に強く興味を引かれる人物だった」

劇中でサムは私財を投げ打ち、妻子をないがしろにしてまで孤児の救済活動に入れ込む。「“自分ならどうするだろう?”という疑問がこの映画を作った理由のひとつでもある。本当に難しい問題だよ。家族か、ボランティアかと問われ、遠くから見て“家族をとる”と言うのは簡単だが、実際に現地で苦しんでいる人に遭遇して何もせず帰ってくることができるのか? そんな自分に耐えられるか? 今でも僕は自問しているよ」。幸い、現在のサムは家庭もうまくいっており、劇中では子供だった愛娘も成人し、父の活動を手伝っているという。

『マシンガン・プリーチャー』が突きつける問いは、すべての人間が考えねばならない問題なのかもかもしれない。

取材・文:相馬学

『マシンガン・プリーチャー』

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