藤村実穂子 (c)Edd Royal & Greg Gagol 藤村実穂子 (c)Edd Royal & Greg Gagol

待ってました! 2012年度に第44回サントリー音楽賞を受賞していた世界的メゾ・ソプラノ藤村実穂子の受賞記念コンサートが、2月16日(月)、東京・サントリーホールで行なわれる。

第44回サントリー音楽賞 受賞記念コンサート<藤村実穂子>の公演情報

サントリー音楽賞はサントリー芸術財団が主宰する顕彰で、1969年度にスタート(1978年度第9回までは「鳥井音楽賞」)。毎年、わが国の洋楽文化の発展にもっとも顕著な業績をあげた個人または団体に贈られている。過去の受賞者(※注1)もそうそうたる顔ぶれ。受賞者によるコンサートは恒例だ。

※注1:サントリー音楽賞 過去の受賞者(外部リンク)

藤村実穂子の世界トップクラスの実力は、昨年亡くなったクラウディオ・アバドなど多くの指揮者たちが彼女を信頼して共演者に指名している事実でも証明できるだろう。東京藝術大学卒業、同大学院修了後、ミュンヘンに留学。2002年にワーグナー《ラインの黄金》のフリッカ役でバイロイト音楽祭にデビュー。日本人歌手として初めてバイロイトの主役級を務めたことはセンセーショナルな話題だった。以来、同音楽祭に連続出演するなど、現代を代表するワーグナー歌手としての評価はゆるぎない。もちろんワーグナーだけでなく、バロックからフランス・オペラ、現代曲、そしてドイツ歌曲まで幅広いレパートリーで活躍。世界中の歌劇場やコンサートホール、音楽祭から引っ張りだこの存在だ。2002年出光音楽賞、2003年第54回芸術選奨文部科学大臣新人賞、2007年第37回エクソンモービル音楽賞洋楽部門奨励賞など受賞多数。2014年紫綬褒章受章。

サントリー音楽賞の受賞対象となった2012年度は、パリ・シャンゼリゼ劇場でのワーグナー《パルジファル》クンドリ役、英国ロイヤル・オペラでの同《神々の黄昏》ヴァルトラウテ役、フィリアホールや紀尾井ホールでのドイツ歌曲リサイタル、いずみホールでのマーラー《大地の歌》(室内合奏版)、バイエルン放送交響楽団来日公演のベートーヴェン《交響曲第9番》のアルト独唱などが高い評価を得た。

受賞コンサートはクリストフ・ウルリヒ・マイヤー指揮の新日本フィルハーモニー交響楽団によるオーケストラ伴奏。J.S.バッハのカンタータ、ドイツ歌曲、オペラ・アリアと、彼女の活動が凝縮されたプログラムはすべてが聴きどころ。彼女が声を発するときに、その全身から放たれるオーラのような華やかさを感じるよろこびは、会場で直に空間を共有する聴き手だけのものだ。

文:宮本明